・ n.2 古寺巡礼  サン・ピエトロ教会 ・ スポレート

古寺巡礼の2回目、今日のご案内はやはりスポレートの町の南端に位置する
サン・ピエトロ教会を。

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正式にはサン・ピエトロ・エクストラ・モエニーア・San Pietro extra moenia・
市壁の外のサン・ピエトロ教会と呼ばれ、かっては町の城壁外だった事を示します。
なぜこの教会が登場かと言うと、写真でも少し見えますが、
素晴らしい浮彫の施された正面壁を持っており、是非ご覧頂きたくここに。

この写真はサイトからで、私めのは2度訪問したどちらもが薄曇りの日で、
この抜ける様な青空と、正面の石段が全部写っているのを拝借。
     
という事で、では石段をお上り下さい!
 


そうそうその前に、サン・ピエトロ教会はどこにあるか、地図をどうぞ。 
地図というのは、上が北、が原則ですが、スポレートの町は南北に広がり
ここでは左が北で、これは旧市街で、町は左にもっと広がり、
スポレートの駅は、この地図外、左下遥かに!

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肝心の今回のサン・ピエトロ教会は、地図の右上、町から離れた場所に。

ついでにご案内いたしますと、先回のドゥオーモは左上19の位置、
その右上18はアルボルノス要塞、町中のインフォメーションの下38はローマ劇場跡。

ウンブリア全体のご案内は
http://italiashinkaishi.seesaa.net/article/460871638.html           



サン・ピエトロ教会の正面全景。
石段を上りながら少しずつ正面が見えて来る時のはやる心。 これは素晴らしい! 
と気持ちが急きます。

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まず上の層から、順にアップでどうぞ! 屋根上に素朴な像が見えますが、
これがどなたか、写真も撮っておらず、サイトに記載も無く。
上から2層目の真ん中には、多分真ん中にモザイク装飾が入っていたのかもで、

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2層目の、左右に見える浮彫の人物像は、
左側が鍵を持っていますから、サン・ピエトロでしょうね、下には雄牛がいて、
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右側の人物像はどなたか分かりませんで、と、やはり雄牛。

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下の正面中央部。 上の層、真ん中と両脇の薔薇窓部分にガラスが入ってますが、
ここにもきっと浮彫の薔薇窓が入っていたのでしょうし、
下の層に、中央の扉を挟んで有名な一連の浮彫。

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かっての薔薇窓の様子を。

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周囲にはやはりモザイクが施され、四隅には4福音者を現わすそれぞれの動物。
上段左に鷲・聖ジョヴァンニ、右の天使像は聖マッテーオ、下段が写真が小さく
ちょっと見難くて申し訳ないですが、翼を持ち、顔を斜め上に持ち上げた形で、
左に有翼のライオン・聖マルコ、右が雄牛の聖ルーカ。

今迄あちこちで薔薇窓のこの4福音者を見ていて、上の鷲と天使像の位置が
入れ替わる事があっても、下段にはライオンと雄牛、というのは変わりがない様子。
       
多分真ん中には素晴らしい薔薇窓があった筈、と思うのは、このサン・ピエトロ教会が
現在の形で建設されたのは12世紀ですが、元々この場所は紀元前7世紀に
溯る墓地があった場所で、これで市門の外、という意味も分かりますね。

5世紀に司教たちの埋葬の為に教会が建設されたのが始まりで、この教会に
あったサン・ピエトロの聖遺物がローマに移され、それを記念しての建設、
と記したサイトもありましたが、
続く世紀に何度か修復や改装が行われつつ、12世紀後半に現在の正面壁の
改装がされた、という経過で、

この正面壁は一度も改装されずに現在に残っているのですが、
14世紀に市民戦争のとばっちりを受け、焼かれた歴史があります。
幸いこの美しい正面壁は残り、再建されたのですが、薔薇窓はきっとその時に
破壊されたのでしょう、勿体ない気がしますが、これだけ残ったのが幸いと思う事に!



では、中央の扉を挟む浮彫をどうぞ。 左右の図柄に少し変化がありますが、
どちらも幾何学模様、花柄、植物、の装飾で、

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農民が雄牛を使って耕す姿、

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こちらは扉の右側、

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鹿が蛇を喰らう姿が、扉を挟み向かい合います。

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扉の脇には素朴なライオン像が並び、

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浮彫の深さがお分かりでしょうか、かなり深い彫り込みで、
扉脇には、嵌め込みモザイク柄も。



正面左の扉の上には、大天使ミカエルがドラゴン退治の姿。
今迄ドラゴン退治は聖ジョルジョの得意技かと思い込んでおりましたが、
う~ん、大天使ミカエルも悪を現わすドラゴン退治なのですねぇ。

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ちょうど都合よくcucciolaさんが大天使についてお書きなので、詳細をどうぞ。
http://blog.livedoor.jp/cucciola1007/archives/3496391.html



そして中央扉の花柄装飾の外側に、有名な一連の浮彫、ウンブリアでも一番美しい
と言われる物の一つ、があり、今迄はその図が語る物語を知らずに眺めておりました。
が、今回ちょうど良いサイトを見つけて読み、分からない事は友人のジュリアーナ、
アンナリーザの助けを借り、素晴らしく面白く愉快な話が語られているのを知ったので、
皆さんもどうぞじっくりご覧下さいね!

全体として教訓的な戒めとエピソードを聖人天使の姿と、動物の姿で語ったもので、
まず左側の上2場面ですが、上からどうぞ。

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死者がベッドに横たわり、その枕元にいるのが右にサン・ピエトロが天国の門の鍵を
手にしており、左に大天使ミケーレ。
       


中央に見える天秤計りに悪魔が手を伸ばし、自分の方に引き寄せようと!

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つまりこの秤は、死者の魂を善か悪か計るもので、悪魔が自分の方に引きよせようと
したのを目ざとく見つけたサン・ピエトロが、左側に現れ、手に持つ鍵でゴツンと
悪魔に一発喰らわせた場面なのですね。

右側でサン・ピエトロが縛られた死者の手から縄をほどいている描写もあり、
悪魔が手に持った紙切れに言葉が彫られているのが見えますね。

今回ジュリアーナが説明してくれて分かり、大笑いしたこの言葉は、
ラテン語で DOLEO QUIA ANTE ERAT MEUS
日本語に意訳しますと、残念、もうちょっとで自分のものだったのに!       
ははは、なんとも人間的なこの悪魔のつぶやき!
       
はい、この場面は善人の死の場面で、



その下、こちらは後悔懺悔せずの死者の場面。
秤は悪魔の方に傾き、その右にはさっさと立ち去る大天使ミカエル。

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死者の手は縛られたままで、悪魔が上に座り込み、もう一人を煮えたぎる釜に
放り込もうとする悪魔。 釜には既に先に放り込まれたどなたかの脚も見え、ははは。

それにしても、この大天使ミカエルの立ち去る姿がなんとも可笑しい、
ワシャ、知らん! とでもいう声が聞こえそうでしょう?!

この如何にも中世的で、素朴ながら素晴らしい彫りの描写。
当時、教会に来た人々がまずこの正面壁を眺め、悔い改めないで悪事を続けると
こんな釜行きになるのだ、とお説教を聞く前にしみじみと我が身を振り返った事と!

それにです、
話し言葉は消えますが、石に彫り込んだ言葉は消えずに残りますものね。

所謂地獄に落ちた悪者達の焼かれたり吊るされたりのフレスコ画はよく見かけ、
いつも愉しく眺めるのですが、こういう浮き彫りとなると数が少なく、一つ見つけたのは、

フェッラーラ ・ ドゥオーモとその博物館
       


同じ位置の右側上は、キリストがサン・ピエトロとサンタンドレアの足を洗う場面、
そして湖上を歩くキリスト。

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先程の善人と悪人の下には、このライオンが主役の3場面が続き、
上から、樵が作った木の罠に捕えられたライオン。

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許しを乞う樵に憐みをかけ、許すライオン。

一方、傲慢な兵士はライオンに喰い殺される、という。

以前この浮彫を見た時は逸話を知らず、単純にライオンと樵、男、兵士との戦いを
現わしているのか、と思ったものでしたが、・・知らないとそう見えません?
こうして知ると、かって中世の文盲の人々が、口伝えに浮彫の逸話を聞き知り、
また伝え、行いの戒めにした様子が伝わってきますね。



こちらは右のエピソード、まるでイソップ物語なのです。
一番上は、死んだふりをした狐を2羽のカラスがついばもうとしますが、
逆にキツネが賢く、カラスを捕まえた、というお話。

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中は、右に雄羊、左に本を読む狼で、雄羊は狼から逃げる為、うぬぼれ屋の狼に
本が読めるかと煽て、狼が読むのに没頭しているすきに雄羊は逃げ出す、という。

一番下はドラゴンをやっつけるライオン、というお話だそう。



所で、スポレートのこの教会の浮彫について、日本画の野村義照画伯が
この雄羊を描いておられる事を知り、画集の写真を探しました。

素晴らしい絵で、実際の浮彫リの雄羊の姿を超え、画家の目を通しての 
壁に生きる雄羊の姿! 皆さんにもご覧頂きたいと思いここに。 どうぞ。

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07年に訪問した時は修復の真っ最中でクレーンが立ち、中もがらんどうのままでしたが、
10年秋には修復が済んでおりました。
が、17世紀後半に改修されたという内部はご覧の様子で、正面の趣はまるでありません。

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石段の上、教会のある高台から見るスポレートの町外れの様子。
この町にはまだまだ中世の面影が残ります。

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こちらは07年の春の写真で、町から遥かに望む教会の様子。
こうして今回も写真を見つつ、またもや教会の正面だけ見て、裏には
回っていない事に気が付き! あ~あ。

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17世紀後半の改修により、ウンブリアで唯一という楕円形の優雅なクーポラがあり、
どうやら修道院もあるのですね。



手前を蛇行する道は、ローマ期からのフラミーニア街道で、アドリア海に抜けます。
ウンブリアの山並みをどうぞ。

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*****

我がイタリア語の先生アンナリーザは、現在隣村オリアーノの小学校を会場に、
英語のサマーキャンプで毎日奮闘中。 小学生を対象の朝から夕方まで
英語だけの毎日を約1ヶ月半、と、プールにも山への散歩にも出かけているそう。
彼女はそれ以外に戯作の舞台公演にも参加、翻訳等など
小さな2人の子持ちとは思えない頑張り屋なのですね。

で、先週の木曜夜にヴェローナでの公演があり、水曜に会った時の話では、
サマーキャンプを4時に済ませヴェローナに。
公演後に片づけを済ませ、家に戻るのが朝の4時頃、と。
で、金曜の朝はプールにサマーキャンプの子供達と行くというので、
では私もプール体操があるので、プールでね、と。

金曜の朝、ですが彼女の姿は見えず、はは、やはり家でのびているかな? 
と思っていましたら、土曜の夜「私の冒険談」とメールがあり、
なんとまぁ、高速のヴェローナ東辺りで、フルハ―スの軽トラックに追突されたのだそう!

120K程のスピードですから、追突されガードレールに突き当たり、
反転して別のトラックにぶつかり、最後はガードレールに挟まったと!

幸いな事に同乗の他の2人にも彼女にも怪我はなく、追突した方の19歳の若者は
朝の3時からの仕事で居眠りで、無事だったそうですが、彼女の車は大破、
ドアがなかなか開かず、やっと車から出て、自分の車を見た途端に恐怖で泣きだしたそう。

体の痛みはあるものの、検査も大丈夫で、元気な彼女は月曜から、
再びサマーキャンプの仕事に!
       
ヴェローナのあの辺りの車の混み具合も良く知っておりますので、
聞いた方が恐ろしくなるような話ですが、無事で本当に良かった!!
             
どうぞ、皆様も夏のお出かけの際には、くれぐれもご用心下さいませませ!!

そして私めは、今月末から8月の中旬にかけ、2組のお客様があり、
モデナにも出かけてくる予定ですので、お盆前まで、お休みを頂きます。
どうぞ、よろしくお願いいたしま~す!


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