・ n.2 ヴァル・ディ・ノン ・ 聖所サン・ロメーディオ 

先回ご案内のヴァル・ディ・ノン、トレンティーノ・アルト・アディジェ州の
ノン渓谷。
今日はその奥深い谷の切りたった岩の上に5層になって聳える
聖所サン・ロメーディオ・San Romedioのご案内を。

細い谷間の道、陽も差さず露が落ち、道も木々もしっとりと濡れる奥にちゃんと
駐車場があり、写真に見える標識に従い、丸石舗装の段々道を辿ります。
    
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あれこれ説明するよりも、次第に見えてくる様子をご覧になり、
1000年以上に渡る民間信仰の姿をもご想像下さいね。
位置の地図などは、先回の「ヴァル・ディ・ノン」をどうぞ!

クリスさんがあれこれコメントに記して下さった事に促され、改めてガイドブックを読み、
漸くにすっきり納得の部分があり、追記補記致しましたので、よろしくお願い致します。



上り道の脇に切り立つ岩はこんなに苔むし、濡れてつるつる滑る
丸石舗装はとても歩きにくく、

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漸くに見えた建物ですが、

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も少し先に進み、見張らせる場所からの眺めはこんな感じ! 凄いでしょう?!
奥の岩山に沿って、次々に小さな教会が重なっているのですね。

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教会の聳えたつ様子。
空は雲ひとつない快晴ですが、陽の射さない地面は濡れて暗く・・。

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上に辿り着いての正面の様子。 どこもかしこも綺麗に手入れ修復が施され、
かっての隠者修行僧達の修道院というイメージはありません。
正面のアーチをくぐると、

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小広場があり、そこから聳える教会群がこんな風に見えますが、

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まずアーチの横にある小礼拝堂に入ると、天井にはこんなフレスコ画が施され、
この礼拝堂はサン・ジョルジョの礼拝堂と呼ばれる物で1487年建設。

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壁にある祭壇。 天井のフレスコ画もそうですが、この祭壇の絵もいつも見かける
教会の装飾画と少し違い、素朴でどこか北国の香り・・。

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一番上の教会までは石段の数が130との事ですが、ここ迄は外の石段だったのが、
今見える左のアーチをくぐると、建物内の石段に。

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建物中程の階の右奥に見える木造部分は、内部の様子が分かりません。

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いよいよ上層部に入るアーチから見下ろすと、こんな様子。 高いでしょう?!

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右側の建物の手前にはやはり小さな教会があり、この小さな礼拝堂が
第一次大戦後に建設された一番新しい「悲しみの聖母の礼拝堂・
Cappella dell'Addlorata」で
入り口アーチに近い方にはバールとスーヴェニール店。



石段の脇、空間がある場所にはこんな風にキリストの受難場面を現わした
木製像が何か所が置かれているのですが、ご覧下さい、
かってのトルコの脅威を現わし、兵士達は皆トルコ兵で表現。

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壁のあちらこちらにいろいろな献金箱、お賽銭箱が設えられているのですが、
熊を連れた聖人、これがこの聖所、隠所を創始した聖ロメーディオ・
San Romedioを現わす姿。
      
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サン・ロメーディオという方は4~5世紀にかけ存在された方だそうで、
南オーストリアはインスブルック近くの城に住む貴族出身。
が、ローマに巡礼した後全ての財産を教会に寄与し、2人の仲間と共に
現在のこの聖所の近くの洞窟に隠棲したのだそう。

彼と熊との逸話は、トレントの司教に会いに行く時に彼の馬を熊が食べてしまい、
馬の代わりに熊に跨って出かけたという物!

暫く前までは聖所の近くに野生の熊が何頭か飼われていたとかで、
現在も入り口アーチの脇に熊の像がありましたが・・!



下から数え2つ目のサン・ミケーレ・アルカンジェロ教会・S.Michele Arcangelo、
1514年建設、狭めながらも比較的明るく整った教会で、ここで司祭の説明を。
   
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我らのグループにはアンナマリーアという大変素晴らしい女性がおられ、どこか遠足に
出かける時には、行きのバスの中で必ず現地事情、土地の歴史などの説明があり、

この日も先回ご案内の3殉教聖人のお話も含め、聖ロメーディオについても
説明を受けていたので、教会で説明に出てきた司祭の話の下手さ加減、ははは、
詰まらない話しぶりに呆れ草臥れながらも、眠らずにやり過ごす事が出来ましたです。

ガイドとしてお願いしてあったようで、お布施を払うのも見ましたが、ドテッと大きな
お腹を抱えた司祭で、清貧の陰者どころか、アンナマリーアの話がなければ、
まったく分からずにすんだ説明振りでしたぁ!       
       
年間20万人程の参拝者があるそうで、この平日もかなりの人出で、 
かっての信仰の巡礼とは違い、観光地として成り立っている様子が見て取れました。



壁に残るフレスコ画には、如何にもの往時の北の香りも残り、

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天井の装飾も素朴ながら可愛らしく、

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隅に、鐘楼に繋がると思われる引き紐も下がります。

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教会建設の最初は1000年頃、聖ロメーディオのお墓の上に建てられた物と言われ、
巡礼達が運び上げた石によって造られたそうで、正式に認められたのは1300年。

15世紀頃になり信仰が盛んになると、今こうして石段の両脇に掛けられている
願かけ成就のお礼・エクス・ボート・ex votoが溢れたのだそう。

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そうなのですね、普通の教会では余り見かけないエクス・ボートは、所謂聖所と
呼ばれる教会や、町の一角に設えられた礼拝所等に山の様に掛けられて
いるのを見ますが、 こうして見るといわゆる民間信仰の厚い聖所であったのが、
今もそうなのかもですが、良く分かります。

そしてエクス・ボートを見かける場所は、やはりちょっとくだけたというか、
親しみやすい庶民的な雰囲気のイメージなのですね。

15世紀になり第2の教会の建設が始まり、16世紀に第3、第4と造られ、
最後の一番上が建設されたのは20世紀初頭で、次々と上に重なる形で
5層の教会が出来たという訳ですが、見える鐘楼は16世紀の物と。
       


石段を上まで上り詰めると、こんな感じに教会の周囲を、
他に言葉が見つからずで失礼し、展望台が開けます。

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上の写真の1ヶ所開いた所から外に出ると、ほら、こんな周囲が!

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谷底はこんなに深く、水音が遥かに聞こえ、

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一番上の教会の屋根はこんな風な板張り。

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中に入ると2つの礼拝堂、というのか教会が隣り合わせにあり、こちらは下側の広い
1536年建設のサン・ロメーディオ教会・S.Romedio、聖人達の壁画が取り囲み、

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石を彫った上の教会入り口。

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この上の教会がいわばこの聖所の心臓部で、入り口の門は1200年作で、
半円部の下に並ぶ3つの顔は、先回ご案内した3殉教聖人を現わし、
太陽は生、上の十字架のキリストは死、彫り込まれただけの十字架は再生を示し、



側柱に見える鷲は民間の、顔は宗教を示し、この聖所の見張り、という解説が。
     
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石段を7段上がるとこの薄暗い教会に。 壁上部の壁画は殆ど消えかけていて、

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少し古いイメージを受ける壁画の名残も見え、

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鉄格子の窓の奥にはこんな小さな礼拝堂も見え、が天使像など、
如何にも普通の民家の置物風で・・!

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ガイドブックには、ここに始めて聖ロメーディオが小礼拝堂の様なもの、少なくとも
十字架を立て信仰の場とし、最後はここに葬られたと言われ、後1000年代になり
お墓の上に建てられた、と言われる最初の教会がこの聖所の起こりと。

5層に重なる教会、という言葉から、なんとなし下の部分から建設、と思い込み、
見学した時に疑問が出たのでしたが、クリスさんのコメントのお陰で
漸くに納得する事が出来ました。 有難うございました!



上の教会から見る、最初に入った広く明るい方の教会。
祭壇正面に、熊を連れた聖ロメーディオの姿。

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射しこむ光に浮かび上がる椅子。

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入り口の扉、薄暗い中で黒茶と思って写したのですが、なんと赤い扉でした。 

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曲りながら降りる石段。

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石の備え付けのお賽銭箱なのですが、大きな南京錠が2つも!!

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入口のアーチまで戻り、漸くにお昼近くの射しこむ陽が嬉しく・・。

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外正面より。 こうして見ると、前の建物と後ろの教会の水平が少しずれている様な。

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厚い厚い壁!

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如何でしたか、サン・ロメーディオの聖所は?
行く前に、素晴らしいと聞いて出かけたのですが、サン・ロメーディオ修道院、
と聞いていたのとはかなり違った姿、印象の聖所でした。

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民間信仰の親しみやすい姿、北の匂いのする姿でもあり、今はかなり観光地化した
様子もあり、一方、かっては辿り着くにも大変な場所であったろうとも思い、
と共に素晴らしい眺望もあり、

いつもの素晴らしい芸術美術作品のある教会とは違う、ふ~ん、そうなのかぁ、
という想いで丸石舗装の道を下ったのでした。
  
            
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