・ グラッパ酒の蒸留所見学 ・ アンドレーア・ダ・ポンテ

10月末に、我が町コネリアーノの近くにあるグラッパ蒸留所、何度も通る道なのに
少し奥にあるせいか、はたまた節穴目か、へへ、まるで気が付かなかった

グラッパ酒の蒸留所・Distilleria della Grappa - Andrea Da Ponte
の見学にグループで出かけました。

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大概見学と言うといつもは圧倒的に女性が多いのですが、グループ自体も、
今回はその逆でして、ははは、男性方は熱心に見、説明を聞き質問。
ですが、工場の見学は機械音が大きく聞きとり難く、それにお察し下さいね、 
柔らかい話の部分はなんとか理解出来ますが、
少し込み入った技術的な話になるとついて行けませんで・・!

工場の見学の後、事務所の奥にある広い試飲販売所兼見学者接待所
とでもいう所に案内され、会社の経歴、様子とか、あれこれ説明を聞き、
そこで美味しいプロセッコとグラッパの接待も受けました。
      
その時に聞いた話にちょっと驚いた内容もあり、ブログ掲載の了解を願いましたら、
後でグラッパ蒸留について概要を書いたのもあるので送りましょう、と快く。


皆さんもイタリアの食後酒グラッパ・Grappa はご存知でしょう?
食後のコーヒーに垂らしたり、小さいガラスのコップで供される強い、
40度ほどの透明なお酒ですね。

ワイン用の汁を絞った後の葡萄の滓から作るのがグラッパ、とは知っていますが、
さて実際にどの様に作るのか、と考えるとまるで知りませんで、
 
サイトでもグラッパ酒蒸留について読み、頂いた概要も読んだのですが、
イマイチぴんと来ず、遂にイタリア語の先生アンナリーザに一緒に読んで貰い、
漸くに、ああ、そうなのか、という納得が多々あり、はい、
ですからここで大いに知ったかぶりで、ははは、ご説明させて頂きます。

トップの写真は、奥の蒸留所の建物。
ガラス越しに、ステンレスと銅の円柱状の蒸留機が見え、
GRAPPA DI PROSECCO・プロセッコ種から作るグラッパ、とあり、



蒸留所の名前 ANDRERA DA PONTE. このダ・ポンテという姓にご留意を。

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地図をどうぞ。 この蒸留所のある位置は、コルバネーゼ・Corbaneseと言い、
コネリアーノからだと車で10分位か、もっと近いかの距離。

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道はずっと北に抜け、ヴィットリオ・ヴェネトから西に向かう道と合流し
ヴァルドッビアーデネ・Valdobbiadeneに。

地図の色のついているこの一帯がプロセッコD O C G の生産地で、その中心の
一番新鮮な葡萄の絞り滓の集まり易い地に、このアンドレア・ダ・ポンテ蒸留所
があり、プロセッコのグラッパと銘打っている訳ですね。



向こうの丘の上にはフォルメニーガ・Foremenigaの教会が見え、

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工場の道の向こうの家は、こんな大きな農家。

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1980年代の最初に、コネリアーノから山沿いの平地にこの大きな蒸留所が
移って来たそうですが、創業は1892年と、既に100年を越す社歴を持ちます。
       
プロセッコのワイン醸造はこの辺り一帯にたくさん点在するのですが、
グラッパの蒸留所もコネリアーノやヴィットリオ・ヴェネトにあり、もっと西奥になる
バッサーノ・デル・グラッパは、まさに町の名が示す様に有名ですね。

n.1 ヴァルドッビアーデネ ・ プロセッコ ワイナリー訪問
http://italiashinkaishi.seesaa.net/article/463526381.html

n.2 ヴァルドッビアーデネ ・ プロセッコ ワイナリー訪問
http://italiashinkaishi.seesaa.net/article/463526671.html



最初に見て頂いた蒸留塔のある建物の手前を抜けると、大変広い広場で、
ステンレスのタンク・サイロが並びます。

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つまりこのサイロに、プロセッコ種の葡萄の絞り滓、まだ発酵する前の、
絞って4時間以内の絞りかすが順に入れられる訳ですね。
プロセッコ種の搾りかすは、約800軒の葡萄栽培農家分がここに集まってくるそうで、
サイロ1本の収容量なども聞きましたが、いつも通り数字に弱く・・。
       
この大きなサイロは一定温度に冷却されており、圧縮された葡萄絞り滓が
発酵しながら底に沈まぬよう、常に新しい葡萄滓が導入される様に管理されていると。
こうして発酵した後、



この建物内の蒸留器に移され、グラッパの蒸留が始まるのですね。

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工場での説明の方に写真の許可を願いましたら、こっちは良いですが
奥はダメです、と言われ、その奥なる物が表の建物かと思い、ははは、

この蒸留器の部分、何機も背の高いステンレスの円柱式が並んでいるのを、
パシャパシャ撮っているのですね。きゃはは。
説明者を皆が取り囲んで聞いているので、写真を撮っても気が付かなかった様で、
私以外にも・・!

最後に事務所でブログ許可を貰う時に、この部分の写真がダメらしいと気が付き、
ディスプレイで見せましたらノーだったのですが、
この建物の窓から見えるのは問題無いという事で、皆さんにはちょっと覗いて
見える部分だけを、はは、shinkaiの出し惜しみではない事を強調し、どうぞ!



どこもかしこも皆オートメ化されており、実際に働いている人は2,3人見かけただけ!

奥の方の工場が大きな騒音で稼働しており、明るい方の内部と、暗い内部と
ちょっと極端でしたが、

こんな風にトラクターで、一見土の様に見える、明るめの茶色の物体を
運んで来ていて、

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こちらの工場の取り入れ口から、こんな風に内部に落ちて行くのですね。
ね、まるで土の様でしょう?
これが蒸留された後の葡萄絞り滓、つまり皮と種でして、

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こちらの工場で、葡萄の種と皮(粉)に分けられるのですね。

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この時点では、皮よりも種の方が断然重くなっているそうで、
葡萄の種からは大変に質の良い油が採れ、化粧品にも多く使われ、
日本にもたくさん輸出されていると!

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へぇ!と驚きましたら、あんた日本人?と聞いて来て、自分の所が直接に
売っているのではないので詳しくは知らないけど、
とにかく日本がたくさん買っているよ、と。
       


こちらは頂いて来たパンフレットから、社の写真。 美しい場所にあるでしょう?

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これがプロセッコ種の葡萄で、食べても美味しいそう。

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手前の建物2階には、こんな風に社の製品がずらっと並び、本当はこの何倍も
棚があり、贈答用の箱入りも各種テーブルに並び、販売もしており、

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その奥に、見学者接待所が続き、

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テーブルには、こんな風に既に誘惑の姿で並んでおりましたが、

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この方が、こちら接待所の方で説明をして下さった社の相談役、
お名前をどこかに控えていたのにぃ・・、
大変洒脱なお人柄で、お話しぶりも、すっきりの応対も気持ち良く。

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さてこちらが社の創業者、ダ・ポンテご一家19時00年代初め。

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奥の列左から3人目がアンドレーア・Andreaで、その右が
弟のマッテーオ・Matteo。

このマッテーオがグラッパ蒸留法についての研究というか、技術面を請け負った様で、
1896年に「蒸留の手引書・Il manuale della distillazione」
という本も出版しているのだそう。

最初に見て頂いた社名の写真で、ダ・ポンテという姓に御留意を、と申しましたが、
この時の社の由来説明で、
モーツァルトの3大オペラ、フィガロの結婚、ドン・ジョヴァンニ、
コジ・ファン・トゥッテの台本を書いたロレンツォ・ダ・ポンテ・Lorenzo da Ponte
の名が出て驚きました。 詰まり縁続きだというのですね。



こちらが良く見かけるロレンツォ・ダ・ポンテの肖像ですが、

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彼はすぐ近くのヴィットリオ・ヴェネト、正確には合併する前のチェーネダ・
Ceneda の生まれでユダヤ系。

父親がカトリックの女性と結婚する時に一家で改宗し、その時のチェーネダの司教
ロレンツォ・ダ・ポンテの姓を貰い、長男の彼はその名も貰ったというのですが、

つまり、この台本作家として有名なロレンツォの父親から3代目が、
この蒸留所の創業者アンドレーアになるのだそう!

早とちりのshinkaiは最初の驚きが醒めぬままに、ロレンツォとアンドレーアが
兄弟だったのかと思い訊ねると、だって最初にハッキリ説明されなかったのですものぉ、
いえ、父親から数えて3代目、100年の違いがあります、と。
ははは、数字に弱い私は、年代がパッと計算できないもんね。

現在の経営者はフランチェスコ・ファブリス・Francesco Fabrisと言いますが、
彼の父親ピエール・リベラーレ・ファブリス・Pier Liberaleが、
アンドレーアの娘ブルーナと結婚しているのだそうで、
社名として創業者アンドレーアの名が引き継がれている訳ですね。

日本だとこういう場合、婿に、となりそうですが、イタリアはそういう事も無く、
夫婦も別姓のままです。

ロレンツォ・ダ・ポンテの破天荒な生涯については、ペーシェクルードさんが


で、実際の写真が使えないので、サイトから拝借の写真で、
実際の蒸留器や蒸留の仕組みを簡単にご説明しますね。

これがマッテーオが作り特許を取ったという蒸留機ですが、

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以下の写真はいずれもバッサーノ・デル・グラッパの橋の脇にある
ポーリ・Poliという蒸留所が公開している博物館の物。

こちらが一番初期の形で、右上に見える図の様に、釜の下から火を焚き、
アルコール分が蒸発したのが左の細い管を伝わる内に冷やされ、液化するという物。

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そして一段進んだものがこれ、いわゆる湯煎型、
イタリア語ではバーニョマリーア・Bagnomariaと言います。
熱が直接に当たって葡萄滓が焦げたりせぬよう、沸いた湯の熱が伝わる方法で、

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この左の写真が、ダ・ポンテのパンフレットにあるバーニョマリーア機。

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現在は技術研究、革新も大変に進んでいまして、この湯煎法も下からだけの
湯ではなく、ぐるっと周囲を取り巻く方式。
その加熱も常にゆっくりと、つけたり消したりだそうで、この伝統の銅製湯煎器も
最新型で、蒸留所建物内で稼働中。

ダ・ポンテの製品の内の2種、ヴェッキア・グラッパ・ディ・プロセッコ・
Vecchia Grappa di Proseccoと、
ウーニカ・ダ・ポンテ・Unica Da Ponteが、この古い形の蒸留機で作られているそう。



全て完全にオートメ化され、内部の様子が映るディスプレイがあり、上の右写真、
一面の霧状態や、右写真の様にポチャン、ポチャンと滴の落ちる映像も見え。

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こちらがサイトから拝借の、最新の真空継続蒸留機、という言葉でよいのか、
真空にした場合の利点などもあれこれ読んだのですがぁ・・、

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つまりです、より美味しいのが蒸留できるようで、がはは、
こんな短いものではなく、最初にご覧頂いた写真の様に、
4階の建物分の天井まで届くのが、何機も稼働中でした!


ここまで書いて来た所で、では、グラッパの定義とは、ですが、
グラッパ・Grappaと呼べるのは、イタリアとサン・マリーノで作られた物、
とヨーロッパ議会で決められており、

グラッパとは、葡萄の搾りかすを発酵させ、蒸留して作る物。
             
フランスにも同様に絞りかすから作る物があるそうですが、上記の条例により、
アックワヴィーテ・Acquaviteに含まれます。

アックワヴィーテと呼ばれる物は、絞りかすが既に発酵した物から蒸留する、
または絞り汁(モスト・mosto)から蒸留させる物で、

ブランデー、コニャックは、ワインを蒸留させた物、
という事で3種、それぞれに違う種類という訳ですね。

蒸留した際のアルコール分は65~86度にもなり、飲むのに適正な40~42度に
蒸留水で薄めるのだそう。



こうして蒸留の後液化した、いわば葡萄絞り滓のスピリト・魂、または葡萄の精
とでも呼べるアルコール、葡萄が育った土地の香り、葡萄の種の違い、
収穫年の出来具合をも全て含んだ葡萄の精は、

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フランスはLimousin産の楢の木樽に入れられ、4年から12年熟成され、
果物や花、香料の香りが強まり、優しく精製されるのだそうですが、
木樽で熟成させるこの段階は大変複雑だそうで、湿度と温度そして年数が絡み、
熟練技術が必要とされると。

そして最後にマイナス10度前後の温度で濾されますが、
この温度がグラッパに特有の透明度を与えるのだそう。



という訳で普通のグラッパは透明色ですが、例外も勿論あり、
薄く黄色になったグラッパの年代物もありまして、

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葡萄酒だと同じ名前のワインでも、何年産と呼ばれますが、
ダ・ポンテのグラッパの場合、高級2種はブレンド物で、
ヴェッキア・グラッパ・ディ・プロセッコ・Vecchia Grappa di Proseccoが
8年分のブレンド、
この写真のグラッパ・ウーニカ・Grappa Unicaは10年分!
ね、美味しそうな色をしていますねぇ。

つまりそれだけ品質保持に努めている事になりますが、展示されていた品の
お値段もお高うございまして、
勿論化粧箱入りでしたが、30とか60エウロとかの朧な記憶。

サイトで見ましたら10年ブレンドが31エウロ、
8年ブレンドが24エウロ、と出ておりましたぁ。



最後のこの写真は、今春のヴェローナ、ヴィニタリー・VINITALYの会場写真で、
我々に説明して下さった方がサンタ・クロースに扮しての、
クリスマス用グラッパ、メリー・クリスマスの宣伝です。

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この為に何カ月もかけて髭を伸ばされたそうで、かゆかったと!

なぜこのクリスマス用グラッパが登場するかと言いますと、
ロレンツォ・ダ・ポンテは晩年をニューヨークで過ごし亡くなりましたが、
1822年のクリスマス・イヴに招かれた友人宅で、ヨーロッパのクリスマスについて
あれこれ語ったのを、その友人が書き遺している、という事に因むのだそうで・・。

親戚の叔父さんのお話とお仕事を結びつけたというご愛敬ですが、
・・まぁクリスマスも近い事でありますので、こちらをどうぞ!
       
Viva la grappa di Babbo Natale!
No grappa No Christmas! ははは。
                     
社のサイトは
http://www.daponte.it/index.php

Youtubeがあれこれ見れます
http://www.youtube.com/distilleriadaponte

shinkaiはです、グラッパの試飲はしておりませんで、なぜと言いますと、
接待で最初に出された、プロセッコのドン・ジョヴァンニ・Don Giovanni、

社ではプロセッコも作っていまして、勿論この命名もモーツァルトのオペラ、
ロレンツォ・ダ・ポンテ台本の「ドン・ジョヴァンニ」に因む訳ですが、

これが美味しかっただけでなく、それが供された細身のグラス、
DとGがデザインされている美しいグラスが欲しくなり、
ははは、若い時以来した事のない、黙ってのお持ち帰りを、ね。
       
このブログを載せましたら、社の方にご報告を致しますが、
イタリア語に訳して最後までじっくり読まれない事を願いつつ、へへへ、
       
皆さんにも、楽しんで頂けましたように!       

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