・ トスカーナのスキャンダル ・ シエナの子豚「チンタ」の冒険談

先月シエナに行った時、市庁舎にある博物館を見て後いつもの様に
博物館のブック・ショップを覗き、面白そうな本が、即、目にとまり! 

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というのも、この表紙の絵はシエナの市庁舎内にある壁画、
アンブロージョ・ロレンツェッティの手になる、14世紀の有名な
フレスコ画で私の大好きなもの。

この童話は、この絵の中に生き続ける子豚君のお話で、絵と両方楽しんで
頂けると思いご紹介を。 では、どうぞ! 出版社 Mandragora 

◆チンタの自己紹介

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自己紹介します。 ボクは、この物語の主人公で、この美しく有名なフレスコ画に
描かれた1人です。 絵の中のボクが、見えます?

ボクは、シエナの豚、チンタ・セネーゼの子豚で、「チンタ」と呼んで下さい。
チンタ・セネーゼという名はチントゥーラ・帯から来ていて、チンタの名は誇りです。

フレスコ画は描かれてから既に700年ほど経っていますが、ボクはまだ子豚です。
ボクの事を書いたこのお話を読まれると、それがお分かりになりますよ。



◆扉絵
という事で、これが扉絵です。
     
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途中で切れましたが、”シエナの有名な壁画に、子豚侵入”とでも
言いましょうか、チンタ君の、いたずら冒険談です。



◆チンタの一日  1
この日、町から遠い遠い丘の上で、チンタの一日がつつがなく始まりました。
いたんだ14個の林檎、熟しきった26個のイチヂク、芽を出したジャガイモ10個、
甘~いザクロ2個をお腹に詰め込み、白い帯がはちきれそう!

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チンタは満足し、黒い尻尾をフルフルと。
お昼寝をしようと考えていると、主人の声が。



◆チンタの一日  2
チンタ、今日は町に行くぞ! お前は「市」にちょうど良くなった。
なんと、素晴らしい! まだ、ボクは町を見た事がないもの。
という事で2人は出かけました。  チンタは、勇んで歩きます。

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なんとたくさん、見るものがある事!
大きなお城の横の葡萄畑には、葡萄が熟し、汁が溢れんばかり。
       
チンタは味見したい誘惑に駆られ、お腹を上に、転がって見せましたが、
豚らしくしろ! と逆に叱られ、足に鎖をつけられる始末。



◆チンタの一日  3
歩いて、歩いて・・、金色になった麦畑にさしかかります。
刈り入れ、そして麦の穂を打つ農民の姿。

ホンのちょっとで良いから、飛び散る麦の穂を食べてみたい、
本当に、ちょっとだけ・・。 でも、後に聞こえるムチの音。
 
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ああ、麦藁に寄りかかって休みたいなぁ、鶏をからかって遊びたいなぁ。



◆チンタの一日  4
ロバを連れた農民を見ては、ロバに跨り走り出したいチンタ。
オリーヴ畑を見、丘の横に広がる葡萄畑も見、
水車のある川にもより、冷たい水も飲み、泳いで町に行きたいチンタ。
そんなこんなの後、遂に町の門に至る坂道に。
       
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町!  煉瓦積みの、高い市壁!
高い、高い塔! 町の門!
ユヒュ~~~~~ン! 大げさに喚くチンタ。

狩人の手からは鷹が飛び去り、騎乗の男は振り返って何事かと見つめ、
尼僧は、世界の終わりが来たかと十字をきり、祈りはじめ・・。

町の門が開いているのを見たチンタは喜び勇んで飛びはね、
ぐっと鎖を強く引き、自由の身に。
   
    

◆チンタの一日  5
町の中はきっと素晴らしいに違いない! 真っ直ぐに走り出すチンタ。
織物職人に衝突。 辺り一面に広がるのも、チンタはなんのその。

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薪を運ぶロバにもぶつかり薪が散らばり、卵を入れた丸かごも地面に落ち、
卵がぺしゃんこ。 矢のように、羊飼いのすぐ横を駆け抜けるチンタ。
混乱に襲われ、逃げ出す羊の群れ。

うん、最初の出だしとしては悪くない! 内心うそぶくチンタ。



◆チンタの一日  6
やみくもに靴屋に突入。 あっちこっちと蹴散らかしに熱中し、
赤いブーツを試して大いに満足。

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次には、ハム・乳製品の店に飛び込み、赤い丸いチーズを失敬。
ハム類にはなぜか興味を示さないチンタ。

主人が大声で呼ぶのが聞こえるものの、問題じゃないね、
町はこんなに素晴らしいもの!
*真ん中に、寺子屋風が見え、頬杖を付き、先生を見つめる子供達!



◆チンタの一日  7
通りで踊る少女たちを見つけたチンタ。

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タンバリンを持っているのを見ると、それを引っつかみ揺すり、片足で飛び跳ね。
少女達の間に入り込み、くるりと回り、片足を蹴り上げ、
バレー・ダンサーが出来るとは知らなんだ!

赤いブーツを履いた子豚と踊るのを恐れ、悲鳴をあげ、
隠れようと逃げ去る少女達。



◆チンタの一日  8
豪華な衣装をつけた花嫁を乗せ、通りかかる馬。
こんなに素晴らしい物を見た事がないチンタは、
上手くご挨拶しようと、大音声でズヌ~~~~~~~ットゥ!

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花嫁の馬は、興奮して暴れまわり、一人、そしてもう一人と落馬し、
花嫁も足を踏み外して落馬。
美しい彼女の王冠も地に落ち、婚礼は直ちに延期。

なんという怖ろしい子豚!  こんな事は終らせないと!
それぞれにつぶやく町の人々。 子豚の主人を探さないと。



◆チンタの一日  9
屋根の上で働く職人達は、下の騒ぎを聞き、何事かと覗き、
もう少しで、落ちてくる煉瓦に当りそうなチンタ。 なんと、怖ろしい! 
 
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見上げて、昼寝に最適なベランダを見つけよじ登るチンタ。
もう少しの所で、下から大声で喚く主人の声。
なんという災いの子豚だ! お前は怖ろしい事を仕出かした。
見ていろ、裁判官の前に連れて行かれて、お前は牢屋に放り込まれ、
俺は何の儲けもなくなるんだぞ!

突然、心配に襲われ、ベランダからドスンと飛び降り、
震えながら、すごすごとうずくまるチンタ。 赤いブーツを、ひったくる主人。



◆チンタの一日  10

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2人は裁きの女神の前に連れて行かれ、その前にひざまずくチンタ。
事件をよく吟味しよう。
裁きの女神、そして、町の代表、白い髭の老人は会議を招集。



◆チンタの一日  11

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会議が招集され、(左から順に)平和、勇気、寛大、温和の女神が、
事件を検討し、それぞれ発言。 恐怖に震えるチンタ。
              
が、最後には、すぐに町から立ち去り、決して、もう町には来ない事を
条件に許され、ヤレヤレ安心。



◆チンタの一日  12
平和の女神から貰ったオリーヴの一枝をくわえ、不機嫌な主人と
町の門から去る2人。

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長い鎖の端、主人から距離を置いて歩きながら、
チンタは溜息と共に、なんと素晴らしい一日を過ごしたものだ!

既に暗くなりかけの長い道を家に戻り、主人はチンタを豚小屋に閉じ込め、
でも既に彼には、町に戻る気は一つもなし。
時に思い出は、予想以上に大きい物。



◆チンタの一日  13
翌朝は、昨日の状況から考えると、チンタにとってはいつもどおり、
上等に始まりました。
朝ご飯をたらふく食べ、昨日のオリーヴの枝に上に丸くなり、
昨日の事を全部思い出せるかな?
   
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目をつむると、少しずつ昨日の事がフレスコ画のように浮かんで来ます。
赤い煉瓦のお城、農民、そして、ロバ、丘の連なり、水車、橋、
城壁と町の門、薪、卵、ブーツ、チーズ、タンブリン、踊り、白馬に乗った花嫁、
カルタ、会計士、左官、ベランダ、そして小鳥の籠まで・・

全部、いつまでも残るだろう、それは、確かだ。
満足して、小さく唸るチンタ。



◆善政の報い  

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この有名な14世紀のフレスコ画は、シエナのプッブリコ宮・市庁舎の現博物館、
かっては、ここに町の執政官達が集まった「平和の部屋」の壁に、
アンブロージョ・ロレンツェッティによって描かれました。

部屋の北の壁にはこの「善政の寓話」、
町を導く、裁きと徳、平和、の女神達が描かれ、
東側には、今回チンタが侵入した「善政の報い」、
町の様子と、田舎の様子が描写されています。

大変に素晴らしいもので、今回、チンタの冒険と共にご覧いただきました。
そしてここでは省略していますが、
北の壁に続く西側には、怖ろしい「悪政の報い」が。

市庁舎の博物館では、他に大変有名なシモーネ・マルティーニの「聖母子像」や、
「グイド・リッチョ将軍像」などのフレスコ画も見る事が出来ます。
シエナにお出かけの際は、是非ご覧下さいね。



◆チンタ・セネーゼ

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こちらが、実物のチンタ君たち。 一時減少していたのが、最近また飼育される様に
なったそうで、実際、今回のトスカーナの旅行中のレストランのメニューにも、
チンタ・セネーゼのハム類が特記されているのを、何度か見ました。

絵本の最後で、チンタが、昨日の思い出にふける場面。
あれが、なんとも可笑しく、
私自身の、旅行の記憶を辿っている目つきと重なり・・! 

全部、いつまでも残るだろう、 それは、確か!
  
     
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