・ n.2 ヴェネツィアの館 ・ カ ・ ドーロ 

煌びやかで優雅な館としてヴェネツィアを代表するカ・ドーロ・Ca' d'Oro
のご案内を続けます。

15世紀にマリーノ・コンタリーニによって建設され、世紀を経るうちに
所有者が何代も変わり、内部も住居として分割され変化していたのを、
現在の国の美術館ジョルジョ・フランケッティとその名を冠されている彼が
1894年に買い取り、30年近い年月と情熱と膨大な金額をつぎ込んで
修復したもの、とお話しましたが、

今日は上階の様子、所蔵品のほんの一部、あの美しい2階のロッジャからの
大運河の眺めをご覧頂きますね。

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写真は、運河の斜め向かいの魚市場から河岸沿いに行き、少し西の位置
から見るカ・ドーロとその西隣のパラッツォ・ジュスティ・Palazzo Giusti.
ジュスティ邸に、ジョルジョ・フランケッティ美術館の事務所があるそう。



こちらが現在の美術館の入り口を入った所にある中庭で、
この奥に先回ご覧頂いた運河側からの中庭があります。

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かっての正面玄関であった運河側とは違い、今は店が立ち並び観光客が
行きかう道路側から入って来ますから、緑の中庭の穏やかさは心に沁み入り、
なんとなしに日本の坪庭を思い出しました。



2階に上がり大展示室に足を踏み入れ、まずその右手の先にある美しい
目を瞠るもの、A.マンテーニャ・Andrea Mantegnaの「聖セバスチャン」
マンテーニャの絵も素晴らしいのですが、置かれている場所の見事さ!

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この絵の為に、ジョルジョ・フランケッティが礼拝堂風に設えらえたものだそうで、        
使われている大変貴重な大理石とが醸し出す
なんとも言えぬ素晴らしい調和の佇まいをご覧下さい。



こちら、アップをどうぞ。

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15世紀の画家マンテーニャ(1431~1506)の作品は、生地に近い
パドヴァからヴェローナ、生涯を閉じたマントヴァを始め各地に散らばります。

ミラノのブレラ絵画館にある「死せるキリスト」、逆遠近法をでとらえた足の先
からの描写、をご覧になられた方は多いと思いますし、有名作品は数多いので、
ここでは「聖セバスチャン」に限りまして、

これはほぼ最晩年の作品、多分1506年、画家が亡くなった年に
彼のマントヴァのアトリエに残されていた物で、
キャンバスにテンペラで描かれた(213x95cm)もの。
       
絵はその後16世紀の前半半ばに、枢機卿ぺエトロ・ベンボ・Pietro Bembo
の家にあったのを見た、という記録があり、

1810年、遺産の相続人から、パヴィーアの解剖学外科医のアントニオ・スカルパ・
Antonio Scarpaのコレクションに。
1832年、このスカルパ氏の死去に伴い、作品はヴェネトはモッタ・ディ・リヴェンツァ・
Motta di Livenzaの彼の弟と甥の元に1893年まで。

こうして作品は、カ・ドーロの修復に生涯を捧げたジョルジョ・フランケッティの手元に、
カ・ドーロを購入する1年前にやって来た、という次第。

画家の最晩年の作品(75歳)でもあるのですが、なんとも素晴らしい、
全ての無駄を省いた到達点、ともいえる描写、

絵の右下に、ふっと火が消え薄い煙がなびく蝋燭があり、それに巻き付いた
紙片にあるラテン語の意は、
NIHIL NISI DIVINVM STABILE EST / COETERA FVMVS,
神のみが永遠、他は煙  
晩年の画家の心境が写しだされたかのような作品ですね。

カ・ドーロのこの礼拝堂風展示室の内部には入れず、遠くからしか見れませんが、
パドヴァの展覧会で、目前に見た事がありました。
ピエトロ・ベンボとルネッサンスの創造展 ・ パドヴァ
http://italiashinkaishi.seesaa.net/article/461921616.html
  


同じモチーフを描いた、同画家の他の2点を下に。
並べて見ると、その差が良くお分かりと思いますので。

ウィーン・Kunsthistorisches Museum 68x30cm
板にテンペラ  1456-1457頃の作品、画家25~6歳

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パリ・ルーヴルの作品 257x142cm
キャンバスにテンペラ 1481年、画家50歳

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こういう素晴らしいマンテーニャの作品を手にし、その翌年カ・ドーロが
売りに出されたと聞いた時の、ジョルジョ・フランケッティの心の内の想いが
想像できる気がしません?!



作品にぴったりの礼拝堂風の天井は、このなんとも素晴らしい格子天井。
この格子天井も、他の古い建物から移したものだそう。

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カ・ドーロの修復に関して、友人の一人であったガブリエーレ・ダヌンツィオ・
Gabriele D'Annunzioが様々に助言したと言いますが、

ダヌンツィオ自身も国に贈り、博物館として今残こる彼の家、ガルダ湖畔の
ガルドーネ・リヴィエーラ・Gardone Rivielaにある、
彼が自分の好みに合わせてコレクションした膨大な品々で埋め尽くされ、
飾られた家を思い出しました。
http://italiashinkaishi.seesaa.net/article/463417856.html



2階の、大運河に面するロッジャの様子をどうぞ。 

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訪問したのが昨年12月の半ば、冬の早い夕暮れ時。
それでも素晴らしい眺めでしたので、もひとつ上の3階からの景色もお楽しみに!

以前、外壁の修復が済んでしばらくの時期に訪問した事があったのですが、
荷物は全て下に預け、ですから勿論写真もダメで、
運河を覗こうと手摺の下の部分にちょっと足をかけましたら、
・・写真では普通の高さに見えますが、天井も手すりも背の高いもので、
監視の人が即やって来て、ダメ!と言われたものです。

今回、学習済みの私めは爪先立って覗きましたが、グループの他の女性は
足を乗せ・・、でも、誰も叱りには来ませんでしたし、写真もフラッシュ無しならOK。
はぁ、少し監視体制が緩和されているのかも、ですね。



こんな可愛い大理石の少年像とか、

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ロッジャ側から奥を眺めた様子で、左手の窪みの部分に、マンテーニャの作品。
正面のこの綴れ織りも素晴らしかったですねぇ。

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多分、これはどこかのお屋敷の天井下の飾りのフレスコ画を剥がしたもので、
大変長く、様々のモチーフが続いたもの。

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こちらは3階への階段の木の手すり。

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細かい彫りの施された素晴らしい物で、ヴェネトのゴシック様式教会から
外されていた物を譲り受けたといい、
表の彫りと、階段内側の普通の格子と2重になっていたと記憶します。



3階の展示室には、ヴァン・ダイク・Anton van Dyckの「紳士の肖像」や、
肉眼では顔と手、襟飾り以外は全て真っ黒に見えたのが、写真の中では・・?!

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これがちゃんとタイトルを見ていないのですが、ジョルジョーネのフレスコ画かも、

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これは、ティツィアーノだったと。 
  
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北方絵画も何枚かあり、1枚、ヤン・ファン・アイク・Jan van Eyckの「磔刑」

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3階のロッジャ、冬の陽が落ちかけ・・、

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お待たせいたしましたぁ、なんとも素晴らしい、大運河の眺めをどうぞ!

まずは東向きに、斜め前の鮮やかなテントが見えるのが魚市場で、
その向こうの低い白い屋根の並びは、野菜市場。

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斜めに続くのは裁判所で、大運河はカーヴし、リアルト橋に出会います。
遠くにサン・マルコの鐘楼も見え・・、



こちらは正面、

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左から2軒目か、一番右端かが正確ではないのですが、済みません、
モロシーニ・ブランドリン邸・Palazzo Morosini Brandolinと。
どなたか、お教え願います!

と書きましたら、有難うございます、「在伊の者」と仰る方から即教えて頂けました!
左から2軒目の、ロッジャの円柱上の飾りがカ・ドーロ、ドゥカーレ宮とも似た建物、
がモロシーニ・ブランドリン邸と。
綴りも間違っていたのを訂正いたしました。今後とも、よろしくお願いいたします!
       


西側、赤い建物が、カ・ファヴレット・Ca’Favretto 現在ホテルで、

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その向こうの白い大きなのが、カ・コルネール・デッラ・レジーナ・
Ca' Corner della Regina と呼ばれる、カテリーナ・コルナーロ・
Caterina Cornaro、キプロス女王となり、後アーゾロの女君主となった、
が生まれた家。

カテリーナ・コルナーロについては、こちらに。
http://italiashinkaishi.seesaa.net/article/463693935.html

冬の夕暮れ近い写真で、少し寒そうな色で残念ですが、
ヴェネツィアは、夏も冬もそれぞれに美しいという事で・・!



最後は、青空に映えるカ・ドーロをどうぞ! ヴァポレットの中からで、
全景は一枚には到底無理ですが、細部をゆっくりお楽しみ下さいね。

2階、3階部分、

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1階の、かっての正面玄関口、

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最後は、正面の一番上部の飾り部分と、休憩中のカモメ君たち。

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2回に分けて、少し詳しくご紹介したカ・ドーロ。
この館は、私にとってのヴェネツィア大好きが始まった原点の一つでもあり、

修復に情熱を傾けた男性の事も読み、
なおの事、少し頑張ってご案内したかったのですが、お楽しみ頂けたように願います!


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