・ スクロヴェーニ礼拝堂 ・ パドヴァ 

1月下旬に行きましたパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂。
ここにはかの有名なジョットのフレスコ画があり、近年修復済みの、
素晴らしく明るく美しくなったのに、何十年振りかで再会しました。

ジョットのフレスコ画と言えば、まずアッシジのサン・フランチェスコ聖堂の壁画、
そしてフィレンツェのサンタ・クローチェ教会も有名ですが、

このパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂の壁画は、アッシジのが1295-1297/1299に
描かれた以降の1303~1305の作品で、
一面の絵の大きさも、アッシジのが270x230と大きなのに対し、
こちらは礼拝堂自体も小さめですので、絵の大きさも2m四方。

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アッシジの方は主題が聖フランチェスコの生涯で、
こちらは聖母マリーアとキリストの生涯、という違いもありますが、

簡単にご説明しますと、画家が既に一度取り組んだ様式で、主題は違うものの、
サイズも小さく、確信に満ちて描かれており、表現密度の濃さではアッシジより上、
と評されている部分もあるようです。

今回少人数で礼拝堂に入り、許された時間内とはいえ、濃密なジョットの世界に
浸る事ができ、アッシジのあの喧騒に満ちた大人数での鑑賞とは違う、
大変静謐な印象を受けました。

◆ 追記です ◆       
アッシジの壁画について、改めてブログで取り上げ、じっくり見て、
こちらとの大きな違いに気が付きました。
と、最近の様々な発見、見直しで、アッシジの作品についての本当の画家名も
挙がっておりますので、こちらもどうぞご覧下さい。
       

今回はカメラ持ち込み禁止で全てガイドブックからの写真です、どうぞ。

ガイドブックの写真は多分夜に照明して写していますが、実際は窓からの明かりが
多く入り明るく、大変良く見えました。

トップは、この天使は聖母マリーアの父親ヨアキムの夢の場面に登場する天使で、
テンペラ画特有の陰色の使い方がこのフレスコ画にも、
つまり白い衣服の影部分に、赤や緑が使われているのが良く分かります。



こちらが正面、祭壇部分。 正面中央に小さく見える3体の彫像ですが、
中央の聖母子像は、ジョヴァンニ・ピサーノ作・Giovanni Pisanoで、
現在は祭壇の手前左側が鑑賞者入り口。

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礼拝堂入り口扉が下中央に見えますが、正面祭壇と向き合う壁には、
「最後の審判」の大きな画面があり、この写真だと天井の星空も見えますね。

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当時のこの青色、空の色、聖母のマントの色などには、大変高価なラピスラズリが
使われていて、金同様に、どの程度使うかをも依頼主と相談したそう。



では、一面ずつご案内したいと思うのですが、全部で両壁面の確か34面+祭壇
+入り口+悪癖と徳等と、膨大な数になりますので、
お話の筋が分かる程度に致しますね。

まずは、聖母マリーアの父親ヨアキムと母親アンナの出会い。

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接吻場面はジョットが初めて描いた、というのも読みました。



こうして後の聖母マリーアが誕生、下にも一人見える赤ちゃんは、
マリーアの従妹エリザべッタの子供で、後の洗礼者ヨハン。 

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マリーアとジュゼッペ(キリストの父親)の結婚。
左から3人目の男性が膝で棒の様なものを折っていて、この棒が何を意味するか
知りませんが、ラファエッロの「マリーアの結婚」にも同じシーンがありますね。

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見開きページで見難く申し訳ないです。 祭壇正面アーチの上部で、

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父なる神が大天使ガブリエルを呼び、マリーアに受胎告知をするように、と、
命じている場面。



受胎告知、こちらが大天使ガブリエル、

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そして、受けるマリーア。 このマリーアは威厳に満ち、結婚式の場面に見える
楚々とした乙女とはまるで違いますね。

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受胎告知の場面は、画家の想像をかき立て、どの様に描くか工夫しているのが
良く分かり、勿論どの場面もそうなのですけど、
この場合、女性の感情を男性画家が如何に描くかという事もあり、
ついあれこれ想像しつつ比較します。

レオナルドのあの受胎告知のマリーアも良いですし、
シモーネ・マルティーニの身をよじった彼女も良いですね。

ヴェネツィアの博物館で見た中世の小さな木製像に、左手に機織りの為の糸を
巻いたのを持ち、右掌をちょいと上げているのがあって、
「オーケー! 分かったよ」という言葉が浮かび、うふうふと一人で笑いましたっけ。



キリスト誕生。 こちらのマリーアも、如何にも聖母の雰囲気で美しく、
一方、手前のジュゼッペは途方にくれているというか・・!

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聖母の赤い衣服の上から掛けられていたと見える青いマント、
半ば剥げ落ちているのも、画面の中で美しいですね。



東方の三博士礼拝。 聖母もキリストも威厳に満ち、

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エジプトへの脱出。 聖母の顔表現は既に見事に決まっていますね。

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ヘロデ王による嬰児殺し。 先に、エジプトに逃れよとのお告げを聞いた
聖母子とジュゼッペはこの殺害を逃れた訳ですが、

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子供時代のキリストの場面を飛ばしまして、 洗礼を受けるキリスト。
全体の柔らかな色の対比がとても美しく、

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ジェルサレム入城。 威厳に満ちたキリストと、木の上から眺める子供たち。

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中世の絵には、ちょいちょい木の上の人物が描かれ、如何にも楽しそうで、
とても好きです。
アヴィニョンの教皇庁の壁画にもありましたっけ。

アヴィニョンの教皇庁宮殿 その1と2
       


最後の晩餐。 時代がも少し下ると、ユダはすぐ分かる様に、財布の革袋と共に
描かれたり、離れていたりですが、この中ではどれがユダなのか良く分からず、
次の場面「ユダの接吻」の同じ色の衣服から、手前側左端の人物でしょうか。

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ユダの接吻。

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礼拝堂見物の前にヴィデオ鑑賞が行われますが、その説明に、この場面の後ろに
見える槍や棒が突き出された形、これがウッチェッロの「サン・ロマーノの戦い」にも
インスピレーションを与えた、とありました。

他には、「嬰児殺し」場面下の子供たちの死体の重なりが、マンテーニャの
体の遠近法に影響したとか、これは少し?でしたが、
近代絵画の先駆けとして、ジョットの働きは大きかったのですね。



磔刑図。

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キリストの死を嘆く人々。 我が子を抱きかかえる聖母の表情と上半身、
周囲の人々、衣服の色のハーモニー、緊迫感漂う美しさ。

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キリスト昇天図。

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入り口上部の「最後の審判」全体図と、

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その地獄部分。 日本の地獄絵と同じで、いつも嬉しく楽しく眺めますが、
この場面も後世の画家に大きな影響を与えたと。
はい、良く分かります、分かります! ははは。

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画面下中央に描かれた、この礼拝堂を建設、聖母マリーアに捧げた
エンリーコ・スクロヴェーニの姿と、

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そのアップを。 目にハイライトが入っているのに気が付かれました?!
     
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エンリーコ・Enrico Scrovegniは、ダンテが「神曲」の中で悪しざまに書いた
父親レジナルドから、家業であった金貸し業を引き継ぎますが、
彼自身は学問も治め、後には政治の世界で外交官役も果たした人物。

当然世間のやっかみの目も承知していたでしょうし、このローマ期の野外劇場跡の
土地を1300年に買い、熱い風呂付きの屋敷や、二つ塔が付いた礼拝堂を
建設した時に、聖母マリーアに捧げ、一家の菩提寺礼拝堂としたようです。
当時の一流画家であったジョットを呼び、ピサーノにも聖母子像を依頼。

有難い事にこうして現在にまで残り、近年の大々的な修復の後は、
全空調、人数制限付きで見学出来るという次第。

ジョヴァンニ・ピサーノ作、エンリーコの等身大の木像は
パドヴァ その3 黄金の世紀に  
http://italiashinkaishi.seesaa.net/article/462330356.html    
   


で、ここからは「悪癖と徳」、各7面ありますが、幾つかを。

左、希望     右、絶望

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左、慈善     右、羨望

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左、悪徳       右、怒り

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悪徳に描かれている木々ですが、この葉の茂りの部分はかなりこんもりと
盛り上げられているのと、
壁画の下部分に描かれた大理石模様は、最初のヴィデオの説明にありましたが、
艶のあるものだったそう。 つまりローマ期に使われていた画法だったと。

この艶のある画法については、こちらをどうぞ。
ポンペイ遺跡 最終回 ・ 秘儀荘 その2 
   
    
       
最後はもう一度、青空の下の礼拝堂の姿をどうぞ!

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礼拝堂のサイトはこちらに。
http://www.cappelladegliscrovegni.it/

入場には予約が必要で、朝の9時から20分毎の予約、英語版もあり、こちらから。
http://www.cappelladegliscrovegni.it/index.php/en/book-now/information-on-ticket-reservation       

ヴェネツィアにお出での時には、近いので、是非お時間を取って
ジョットの傑作を見に、お出かけ下さい!

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