・ n.1  フィレンツェ ・ ヴェッキオ宮 

今回のフィレンツェ巡りでは、温故知新もたくさんありましたが、
新しい興味深い場所もいくつか知りました。

今日はその一つ、ヴェッキオ宮・palazzo Vecchioの
秘密の行程・percorsi segretiなるものをご紹介です。

これは予約をし、ガイドに案内をして貰うものですが、
引きこもって化学実験に没頭したという、フランチェスコ1世の秘密の書斎、
工房や、500年代広間の天井裏が見れ、たいへん興味深かったです。

このコースは始まってまだ新しいので、余りご存じないと思い、
今日はそのご案内とヴェッキオ宮内部のこまごまを。 ごゆっくりどうぞ!
   
写真は、朝10時前、既に賑わうシニョリーア広場。

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皆さんご存知の通り、ヴェッキオ宮はフィレンツェのど真ん中、
シニョリーア広場・piazza della Signoriaの東南角を占め、
現役のフィレンツェ市役所でもあり、南隣には美術愛好家垂涎の
ウッフィーツィ美術館・gli Uffiziがある位置に。



ダヴィデ像とエルコレ像の間に扉が見えますが、
ここと、建物左角を曲がった所にも入り口があります。

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どちらからも入れますが、所持物検査が大変厳しかった!
どこの博物・美術館も、金属探知機の間を抜けますが、
ヴェッキオ宮は市役所も兼ね、特に会議開催中のせいか、
バッグの中も全部検査、靴を脱がないだけでした!



入り口脇のダヴィデ像。

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なかなか良く出来ているコピー像ですが、今回改めてみるとやはり違いますね。
とりわけ眼球の角度、鼻(小鼻、鼻の穴)、口元、そして顔の緊張感がね。

shinkaiは今回アッカデーミア美術館はパスしましたが、
行かれる予定の方は予約をどうぞ! 列が出来ておりました。



入ってすぐのミケロッツォの中庭。 小天使(ヴェロッキオ作のコピー)の
いる噴水があり、周囲の円柱、壁が大変優雅な雰囲気を。

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この装飾は、フランチェスコ1世が1565年にオーストリア皇帝の姫
ハプスブルゲ家のジョヴァンナと結婚する際に、ヴァザーリが改装したものと。
円柱は漆喰装飾の金塗り、壁のフレスコ画はオーストリア皇帝領の
ウィーンやインスブルック、プラハの景色なのだそう。(見なかったぁ!)



円柱の漆喰装飾が大変美しく、
天井部分の装飾によく釣り合うなぁと思って眺め・・。

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中庭はこうして吹き抜けになっていますから、
冬、雪がひらひらと、噴水の小天使に舞い落ちる事もありえますねぇ。

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最初の中庭から奥に行くと、も一つ広い中庭があり、こちらは明るく、
税関の広間・cortire della doganaといい、雰囲気がまるで違います。

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この広間の一角に、よじ登りのライオン君。 ヴェッキオ宮の塔の頂上にあり、
金の球、フィレンツェ象徴の百合の花と一緒に15世紀から頑張り、
現在上にあるのは20世紀のコピーと。


この左手に切符売り場があり、ここで予約した旨を告げ待ちます。

秘密の行程なる予約コースがあるのを知ったのは、フィレンツェに出かける
ほんの少し前で、電話をして申し込みました。
詳細も知らず、逃げ道とか建物の上に上がれるのかも、と!

朝の10時を指定され行きましたら、なんと私一人で、
ヌッチョという、黒髪、黒ずくめ、長い睫の若い男性が案内をしてくれました。



まずは上の写真の中庭の奥、今見える扉から。
鍵持ちの女性が一人先導し、それぞれの扉の鍵を開けて待っていてくれます。

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上の扉を入った場所には何もなく、ヴェッキオ宮の石壁のみが見え、
今日通るこの秘密の通路は、この強い石壁を利用して造られたものと。

つまりヴェッキオ宮の厚い石壁の中を刳り貫いて、通路が造られているのですね。
強固な石・pietra forteと呼ばれるそうで、本当に強いのか?と
訊ねましたら、そうだ、と。
フィレンツェの近くに産出し、建物や橋の建設に大いに利用されたそう。



こうして人一人がやっとの狭い狭い急傾斜の階段を上り、
(前日夕にジオットの鐘楼に上ったばかり!)へっ、へっと辿り着いたのが、
この図に見える上から2層目の左側、何もない部屋部分。

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この壁の中の道は、やはり当初秘密の抜け道・逃げ道として造られ、
後に隠れ書斎などが付け加えられた様子。

ここで彼がトスカーナ大公国の継承者について説明してくれ、
殆ど名前のみ知っている私は、それは誰の子? 誰の子?と質問し、
ようやっとあの辺りの系図がすっきりと頭に!
非常事態にならないと、頭に納まらない私。

で、これより右側の部屋に行きます。



通ったのがこの小部屋で、    写真はガイドブックから
写真に見える奥の右、何も絵のない部分が扉で、あそこから入ります。

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狭い部屋ではありますが、扉から入るに特別に身を屈める程でなく、
天井部分は(我が家の壁を睨みながら考察するに)
2m50~60cmから始まる高さ、と想像。

とにかく凄い部屋!!
これがフランチェスコ1世の書斎・studioloと呼ばれる秘密の部屋。



まさに、宝石箱の中にすっぽり入った形、雰囲気!
入った上にフランチェスコ1世の母親、エレオノーラ・ディ・トレドの肖像画。

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やはり特徴ある美人ですねぇ、すぐ分かります。
何枚かの肖像画で見る彼女の髪は濃い色に見えますが、
金髪で青い目、完璧な卵型のまぶしい美人、だったと。
      


そして向かい合って、父親の初代トスカーナ大公コジモ1世が。
この部屋にはフランチェスコと父親のみが通り、
他にはほんの特定の人だけが案内されたそう。

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コジモ1世とエレオノーラご夫妻の結婚生活は、大変上手く行った様子で、
仲の悪い噂は一つも出なかったと。
内向的で激しく、激変する気分の夫を上手く宥める事の出来る唯一の人物で、
庶民に対する慈善にも大変熱心だったとか。

が、決して街を歩かず、馬か緑の繻子とビロードのお輿で庶民に顔を見せず、
スペイン式の宮廷を持ち込んだのが、フィレンツェ市民に余り人気がなかったとか。
難しいものですねぇ!
       


天井部分の真ん中の絵。 絵はすべて寓意画で、
神から力を授けられた母親が授乳していますが、人間の子、一角獣、兎、
蛇共にで、後にたくさんの動物が順番待ちしています。
つまり単なる母親ではなく、生物すべての母親を現しているとの事。

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母親エレオノーラの肖像の両脇に春と夏の寓意画、父親コジモの側には秋と冬、
そしてそのそれぞれに、人間の4気質をも現す寓意画が展開します。
天井画の作者はポッピと呼ばれる画家で、全体を指揮したヴァザーリの絵も。



中段の絵もやはり寓意画で、これは錬金術師。
右下フランチェスコ自身が絵の中で、一生懸命に火にかけた鍋をかき回し!

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この絵が一番出来が良い、と思い写したのですが、
ガイドブックに載っているのも大概この絵ですね。

で絵の下、入って来た扉と同じ高さの絵の後側はすべて隠し戸棚になっていて、、
(この部分を開けて見せてくれました)
各絵の寓意に従って、中に収められている品が整理されていたそう。
つまり、この錬金術の絵の後の隠し棚には薬品類という具合。

ローマ大学の教授が戸棚の中の品を整理されたそうで、この部屋すべての
戸棚の中を確認するのに5時間掛かったとか!

現在天井部分に照明があり、部屋の中は薄暗いものの露出を上げると
写真が撮れるほどですが、
当時の明かりは?と訊ねましたら、完全に真っ暗で、フランチェスコ自身が
明かりを持ってこの部屋にやって来たのだそう!
       
かなりのオXXだったろう、と思うのは、私だけではないと、へへ。
  


錬金術の絵の向かい側の下段の絵で、勿論この後にも隠し戸棚があると。  
手振れご容赦。
化学実験の薬品類だけでなく、貨幣や瓶類のコレクションもあった様子で、
一部はピッティ宮に展示されていると。

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一番端の絵の後には、ご覧のように階段が隠され。

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こちらは隣に接する四角い部屋で、父親のコジモ1世のテゾレット・
tesorettoと呼ばれる部分と。

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彼のテゾーロ・お宝を仕舞っていた部屋だそうで、召使も入れなかったとか!
となると、親子ともに・・、なるほど!!
       
格子天井の絵はやはり寓意画で埋められ、これは四隅の内の一枚音楽、
他には美術、建築、彫刻が。
       


こちらは天井中央部ですが、凄い装飾。
一人で楽しむ隠れ部屋にしてはお金が掛かっているなぁ! 
というのが、正直な感想。

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こちら四角い部屋の、隠し戸棚。
お隣の息子の書斎の絵の後も、こんな感じでした。

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が、嬉しい事に、この部屋には窓が! ほっ。

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最初に上った階段もこんな感じで、一人が通るのにやっと。
右下脇にへっこみ部分が見えますが、あの中に釣瓶があり、井戸に繋がり・・。

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ガイド氏が、馬の森・bosco di cavalloを見た事ある? と訊ねます。
いいえ、何それ?!では、見に行こう、とここに。

なんと500年代・チンクエチェント広間の天井裏です。

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この太い何本も続く梁が、あの大広間の屋根を支え、格子天井の絵を
吊り上げているのです。
馬の森 とは、なんとも素敵な表現ですね!



梁からの鉄棒が、格子天井を支えます。
これを見て初めて、
そうよね、あの天井格子は吊られているのよね、と納得。

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奥の木に1の印、手前にA。 これはオリジナルだそうで、
1から向こうは最初に作られた梁で、屋根を支え、天井を吊り、
手前のAは、屋根に届かない高さで、古い梁全体の強化のため
後年作られたものだそう。

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この天井裏の馬達は、ヴァザーリの作だそうで、
彼はヴェネツィアのドゥカーレ宮、大評議の間を参考に作ったのだそう。



奥行き60のチンクエチェント広間の天井裏、
微かに光が射し込み、奥が望めます。

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という所で、広間の上に。 この天井裏を見て来たのでした。

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ヴァザーリの工事以前の天井の高さは、正面のマーチ型の窓の下の高さ、
つまり両脇の絵の上辺よりも低かったわけですね。

右側の壁際の扉横に、ミケランジェロの彫像が見えますが、
ヴェッキオ宮は現市役所でもあり、広間の半分で講演会の真っ最中。



格子天井の絵の部分。
上から吊られている部分を隠す為の、飾りの突起部分は 
雫・goccie・ゴッチェ(複)と呼ばれるそうで、これも素敵な表現。
    
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こうしてみると、絵が板に描かれているのが良く分かります。
ええ、キャンバスが発明されるのは、もう少し後になりますね。

という所で、ガイド氏と別れ、一人でヴェッキオ宮の見物に。




チンクエチェント広間に降ります。 何とも広い高い空間に驚くばかり。
部屋の向こう角、アーチの下にガラス戸が見えますが、

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この広間の隅から、フランチェスコの書斎がちょっぴり覗けます。
これは後年開けられた扉で、当時はなかったと。 壁の厚さをご覧下さい!
       
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大変興味深い「秘密の行程」コースでしたが サイトはこちらに。
http://musefirenze.it/attivita/percorsi-segreti/
ここでフランチェスコの書斎のヴィデオが見られます。

所要時間は1時間15分ほど。
予約が要りますが、金額はガイド氏の案内つき、
ヴェッキオ宮全体の入場料も含め 9,5エウロ、英語のガイドもあり。
時間に余裕のある方、是非! のお勧めです。

追記:上のサイトも新しく探したもので、このページに時間と料金もあり、
   予約もできます。
       
という所で、ヴェッキオ宮のご案内 n.2 にお進み願います。

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