・ 新開志保 ・ 水彩小品展  n.2

新開志保 ・ 水彩小品展 n.1 に続き、古い現場スケッチによる
イタリア風景をご覧下さい。
鉛筆と不透明水彩(グワッシュ)使用です。
       

◆ サン・ジミニャーノ・San Gimignano 博物館中庭 (22x31) 
  
18-59_t_t.jpg

町全体に中世の面影が偲ばれるサン・ジミニャーノ。  
何本もの塔が今も尚立ち並び、一番大きな高い塔に昇る事が出来る。
  
かなりな階段数にあえぎながら、同時に登ったイタリア人の女の子が、
「アンコーラ?! アンコーラ?!」(まだ?! まだ?!)
と、息を切らしつつ叫び、そして笑う。    
確かに、登るのが大変なだけ、眺めは素晴らしかった!

傍らの薄暗いドゥオモの中、壁のフレスコ画を見るのに、
誰かがお金を入れて、明かりの点くのを、皆が待っていて、
明かりが点くと、ちょっとした安堵の声が上がる。 
こうして見たシモーネ・マルティーニは、やはり素晴らしかった!



◆ ヴォルテッラ・Volterra ・ 洗礼堂  (22x27)   

19-15_t_t.jpg

ヴォルテッラの町は、他のエトルスク文化の栄えた町と同様、
高所にあり、しかも一種異様な雰囲気に囲まれた町。
何故かはいまだに分らないけど、妖気漂う、とさえ言えそうな町、
そして町に至る風景も。

エトルスク博物館は素晴らしく、ジャコメッティの長身の人物像を
髣髴とさせる像もある。

一方、美術館の見物者は私一人!  
イコンが、すぐ手の届きそうな所にある。  ムム。

この素敵な洗礼堂の周囲は、他の町と同様に駐車場と化していて、
建物の足元は、傍に行って確かめるしかなかった。



◆ アンギアーリ・Anghiali・ 塔の見える坂道(21x31,5)   

20-05_t_t.jpg

サン・セポルクロの町からバスで2,3日通った、中世の残る
丘の上の小さな町。

中心広場の端の建物の下のアーチをくぐり抜けると、
市壁に近いこの場所に出てくる。

アーチの下の暗い暗い坂道は、中程でカーヴをしていて、尚暗く、  
最初は、本当に恐るおそる通ったもの。

これを描いていた時、少女が声をかけてきて、自分を描いてくれ、と。
いいよ、と描いている内に、彼女の家族が集まって来た。  
多分、ドイツに移住したイタリア人家族。
描き終えた後、お金はいらないと言うと、
母親は住所を書き「いつでも寄ってくれ」と、渡してくれた。



◆ オルヴィエート・Orvieto ・ アーチ  (22x30)   

21-47_t_t.jpg

「ウンブリアで一番美しい」と有名な、オルヴィエートのドゥオモ。
余りにも絢爛豪華で私には・・。
で、その正面辺りから入って来た所がこの場所。

向かい合った建物を結ぶように、支えあうように、
潜り抜けるいくつものアーチがそれぞれの形で繋がっている。 
光が差し込まない壁は、苔むしている。  
此処にも中世の匂いが、漂う。



◆ アッシジ・Assisi ・ サン・フランチェスコ教会 (31x23)    

22-18_t_t.jpg

中世の町がそのまま残っているので有名な、アッシジ。
訪れた方も、たくさんおいででしょう。

町の中心は、やはりこのサン・フランチェスコ聖堂。

12世紀に生きた聖フランチェスコも有名ながら、
いまなお時を越え、私たちを惹きつける何か、がこの町にはある。

スケッチをしていた夏の暑い日、何人もが覗きに来、
私が草の上にペタッと蛙座りをしているのに気がつき、大いに笑った!  
何時間も、行儀良くは座れませんてば。



◆ アッシジ ・ サンタ・クローチェ通り  (30x22,5)  

23-23_t_t.jpg

アッシジの町は山腹に広がり、道は坂を登り下りして続く。 
建物の石はピンク色で、白い石との取り合わせがとても美しく、
それもこの町の魅力の一つ。

半開きのドアの家はどうやら尼僧の家のようで、
お掃除をし、出入りするのが見える。

通りかかった小父さんが絵を覗き、おもむろにバジリコの一枝を
差し出した。  グラーツィエ!



◆ アッシジ ・ サンタ・キアーラ広場から  (31x22)  

24-33_t_t.jpg

美しい薔薇窓を持ち、ピンクと白い石の縞模様の壁、
聖女キアーラにふさわしい、清楚な感じの聖堂前に広場がある。
巡礼のおのぼりさんや観光客が、引きも切らず行き来する広場の、
その端っこで、終日お絵かき。

何もかも忘れ、没頭できる幸せ!
スケッチしていた日々は、いつもお天気の記憶がある。

でも写真を見ると勿論曇り空の日もあり、記憶の違いに少し驚き。
が、私の中の記憶が正しいと確信している。



◆ アッシジ ・ マルチェッラの泉  (29x23)  

25-20_t_t.jpg

アッシジでスケッチの日々は、朝起きると、一杯のカッフェと
クロワッサンの朝食をすまし、
即、スケッチブックの入ったバッグを肩に、出かけたもの。

前日に都合よく、スケッチの場所を決めてあったらそこへ、
そうでない時は、朝日を浴びながらあちらこちら。

通りがかりのシニョーレが、「盾の泉」だと、教えてくれ、
泉には、朝のうちたくさんの鳩がやって来て、
身じまいする様子を楽しませてくれた。



◆ アッシジ ・ サンタンドレア少路  (22x30)  

26-38_t_t.jpg

サン・フランチェスコ聖堂から、左手へ少し登った所の少路。
壁から見守り続けるマリア様、  
すり減った石畳、刻み込まれた歳月。
  
スケッチしていた時、猫が遊びに来て楽しませて貰ったが、  
後日、この場所の絵葉書を見つけて買った所、
おお、なんと、この猫が写っていた!

*このアーチを抜けすぐ右に折れると、
 今回のスケッチ展案内状の、水飲み場があります。



◆ ヴェネツィア・Venezia・ サンタ・マダレ-ナ広場(29x23)   

27-38_t_t.jpg

ヴェネツィア国鉄駅前を東に、ワーグナーがここで亡くなったと言う
今はカジノの「ヴェンドゥラミン・カレルジ宮」の近く。
 
通り道からはちょっと入り込んでいて、地元の人々が一休みに。
駅近くの安ホテルに泊まりこみ、毎朝せっせとこの道を歩いた。

古い、軒の低い建物が寄り添い、梁も見え、屋根もかしいでいる。 
ヴェネツィア独特の丸い煙突。

そして広場に必ずある井戸。 今は塞がれ、時に猫の居場所。
朝日が教会の影を落す。
あの窓の内の住人も、もう起き出しているはず。

ヴェネツィア
      

◆ ヴェネツィア ・ カ・ドーロ   (26x22)   

28-47_t_t.jpg

説明を要しないほど有名な、ヴェネツィアの館。  
かって正面の壁には、金が塗られていたと言う。
南西に向かっているので、一日中光り輝く位置にあり、  
冬の日の霧の中でも、素敵だったろう。

まさにヴェネツィアの繁栄を現している。
 
ヴェネツィア・ゴシック様式は、ゴシック本来の尖った古めかしい
感じは無く、いかにも優雅で、繊細なイメージのみを伝える。

我が愛するヴェネツィア!    


***

ここからのスケッチは、撮った写真から描き起こしたものです。

◆ ヴェネツィア・ サン・ジャコモ・デッレ・オーリオ広場近く(26x23)
   
29-09_t_t.jpg

ヴェネツィアの街の面白さは、運河に沿って建物があり、道がある事と。
つまり、運河の流れが先なのだ。
干潟を埋め、地盤の固い場所に建物を作った、という歴史からも
それは肯ける。

曲がりくねった運河、沿った建物、建物の下を潜り抜け、続くアーチ。
そして、小さな広場、井戸。
それらに陽が射すとき、
面白いイメージが浮かび出る。



◆ヴェネツィア ・ サン・ジョルジョ・マッジョーレ (21,5x14)   

30-51_t_t.jpg

陰鬱な空が広がる、冬のヴェネツィア。
  
サン・マルコの岸も高潮に洗われ、
ゴンドラのお客もなく、席は覆われたまま。
明るい灯のともったバールが恋しい、冬のヴェネツィア。



◆ ヴェネツィア ・ リアルト橋  (22x14,5)   
 
31-09_t_t.jpg

リアルト橋はかって木の橋だった、カルパッチョ描くところの絵が
アッカデミア美術館にある。 
ゴンドラも今の様に黒一色ではなく、思いのままの色だったそう。
 
想像してご覧あれ、当時のヴェネツィアを。  
東洋との接点であり、人種も様々、当時から国際都市。
殆どそのままの姿で、今も存在し続ける。

そんなヴェネツィアが大好き。  
永遠なれ、ヴェネツィアよ!



◆ ヴェネツィア ・ 赤い壁の家 (21x14,5)   

32-36_t_t.jpg

ヴェネツィア全体の絵葉書の種類が、一体何種類あるかは知らない。 
が、かなりの枚数を持っていて、  
描いた場所でなくとも、どこの場所かは分る位になっている。

が、この赤い壁の絵葉書を見た時は分らなかった。  
知りたかったが、場所は書いてなく、
素敵な場所と感じた分、尚の事知りたかった。

数年後、ジョヴァンニ・エ・パオロ広場のコッレオーニ将軍騎馬像 
の前から振り向くと、この赤い壁があった。
壁は、絵葉書と変わっておらず、杭の色と緑の扉が新しくなっていた。



◆ ヴェネツィア・ サンタ・マリア・デッラ・サルーテ(15,5x21)

33-57_t_t.jpg

アッカデミア橋から見るデッラ・サルーテの聖堂。
大きな丸屋根、張り出した渦巻き、聖人たち。

ペストの終焉を感謝し、建設された聖堂にふさわしく、
11月の祭日には参拝客用の仮の橋がかかり、終日大賑わいとなる。

冬の霧の深い日、前を通る水上バスの中からも
すっぽりと見えなくなる事も、経験した。
今、夏の日、うだるような暑さの中、
けだるげに、ゆらゆらと揺れて見える。
   
    

◆ ベッルーノ・Belluno ・ 集落  (21,5x15)   

34-34_t_t.jpg

わが町コネリアーノ・Coneglianoから、汽車で北へ1時間。 
距離は50キロ程で、ゆっくりと山間の谷間道を曲がりながら行く。
かっての「アレマンの道」と呼ばれる、
ドイツやスイスに通じる、山岳民族の道である。

山と山との間をすり抜け、古い小さな村を眺めながら峠を越し、
ポンテ・ネッリ・アルピに着く。
北へ行く道と(コルティナ・ダンペッツォやオーストリアへ)、
西に、ピアーヴェ河に沿って下る道との分岐点で、 
ベッルーノは、ここから西へ7キロの地点。

ベッルーノの司教殿は、強大な勢力を持っていたようで、
コネリアーノが歴史に登場する10世紀は、司教の勢力範囲として。
  
その歴史どおり、町の中心は中世の匂いに満ち、
その後のヴェネツィア共和国の下の建物群と。
このスケッチの場所は、町の東外れの道から見下ろした集落。
緑に埋もれるようにして、小さく固まって見えた。

山の小さなヴェネツィア ・ ベッルーノ・Belluno
   
   

◆ 蕾と花と  (17x28)

35-15_t_t.jpg

透明水彩絵の具を使い始め、やはりスケッチの仕方が少し変わったと。
果物、花、猫など、いろいろ描いて発色の具合を見、
紙も、グワッシュを使っていた時のコットン紙から、
厚手のケント紙に。 鉛筆は、0,3mmのシャーペンを。
       
絵の具もトゥレヴィーゾの画材店で、ウインザー&ニュートン、
そしてシューミッケを、画材店主のお勧めで。  
色はお好みを32色えらび、筆はコリンスキーのシリーズで。

思うように描けず、じたばたするうちに
ケント紙もこすれ、絵の具の発色も鈍くなり・・。

でも、描いている時間は、やはり至福のとき。
日常の思い悩む事もひととき忘れ、
好きな音楽を聴きながら、没頭します。
       
何もかもが愛おしく、心に滲みいる様になっている自分に
気がつきました。
いつまで、こうして暮らしていけるのか、悩みますまい!
今こうして、生きる事を味わえる生活に、感謝するのみ!


新開志保 水彩小品展 
*尾道 孔雀荘 11月1日(木)~15日(木) 火曜定休 9時~18時
 尾道市西土堂町4-8 Tel 0848-25-2109
                        
*広島 無垢画廊 11月19日(月)~24日(土) 10時~18時
 広島市中町5-19 Tel 082-246-0690 (広島TV向かい)

会期中、会場でお喋りできます事、楽しみに!

という事で、向こう1ヶ月間、日本にまいりますので、
ブログはお休みさせて頂きます。 イェイ!
よろしくお願いいたしま~す。
では、12月に。 お元気でどうぞ!!     


*****

ブログご訪問、有難うございます!
見たよ! の応援クリックも宜しくお願い致しま~す!


*****

コメントの書き込みについてのお願い。

ブログの記事下に、「コメントを書く」が出ていない時は、
上か右の、記事タイトルをクリックして頂けると
記事の一番下に「コメントを書く」が出ますので、よろしくお願いいたします。
非公開コメントをご希望の場合は、非公開で、と書いて頂くと、  
コメント承認制ですので、保留にし、お返事だけ公開しますので、
それもご了承下さいませ。

この記事へのコメント