・ ドムス・デル・ミート ・ サンタンジェロ・イン・ヴァード

先回に引き続き、マルケ州の知られざる珠玉の町とでも言える
サンタンジェロ・イン・ヴァード・Sant'Angelo in Vadoのご案内で、
今回は町外れの草原で発見された紀元後1世紀末の、ローマ期貴族の家の
素晴らしい床モザイクです。

そして最後にちょっぴり、これで町が有名な白タルトゥーフォの姿もね、ははは。
では、ごゆっくりどうぞ!

写真は、遺跡発掘所に案内し説明してくれたインフォメーションの女性の笑顔を再度!
     
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先回の記事に町の小さな地図もありましたが、そうなのです、こんな風に町を
南に出はずれた草原に、遺跡があるのですね。

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東に見える教会はサン・フランチェスコ。

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発掘場所の上には、こんな様子に屋根が設えられているものの、
周囲はまだ単にナイロンで囲った、と言うだけでして・・、

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この写真は友人のmkちゃんのもの。

今回見て頂くのは、中が写真禁止でしたので、案内所で貰ったパンフレット、
コムーネのサイト、そして他のサイトで探したものです。

このモザイク遺跡があるのを知ったのも本当に偶然というか、町を歩いていて
たまたま出会った若いシニョーラが、今日は遺跡が見学の日で開いていますよ、
インフォメーションで聞いてご覧なさい、と教えてくれたのですね。
で、遺跡なる物が何か良く分からないままインフォメーションに行き、見学したい、と
申し込んだという訳で、毎日ずっと開いてはいないという幸運もありました。



考古学上の発見として最近50年の内で最大の物、と言われる
このローマ貴族の屋敷跡のモザイクですが、
       
この広大な草原はカンポ・デッラ・ピエーヴェ・Campo della Pieve・教会広場
とでも呼ばれるもので、この下に遺跡が見つかったのは偶然にも、航空写真からだそう!

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周囲に写っている家々の大きさから、遺跡の大きさをご想像下さいね。
写真が何年に撮られたものか書いてありませんが、この写真が元で1999年から
調査が始まり、2000年から発掘が始まった、と。



こちらはまだ覆いも屋根も無い時の上空からの写真で、
各部屋に床モザイクがあるのが見えますね。

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現在内部はこんな感じで、ぐるっと見学者用の歩道が出来、ガイド付きで見学が
出来るようになっていますが、発掘の大変さ、損傷のひどい部分の修復等を考えると、
ここまで整備されたのも、ついつい最近の事なのでしょう。

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こちらが発掘された家全体の平面図。

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下に見える赤い矢印部分が見学用入り口ですが、実際に玄関ロビーに当たる部分。
全体は1000平方にも及ぶ1世紀末の広い貴族の屋敷で、中央に中庭と井戸が。
そうですね、ポンペイ遺跡で見た家の形もこうでした。

この一帯にはローマ期にTifernum Mataurenseという町があり、
ご覧の様にこの家の持ち主はかなりの地位、富の持ち主だったのが分かりますが、
モザイクで描かれた内容が神話に基ずく物が多い事から、ドムス・デル・ミート・
Domus del Mito・神話の家、と命名。
       
草原の下にこうして2000年の間眠っていた訳ですが、まったくよくもまぁ土地開発で
破壊されなかったもの!
サンタンジェロ・イン・ヴァードの町はローマ期の後、川の氾濫により破壊されて
いたのを、その上にロンゴバルドの民が新しく町を造ったという歴史があると
読んだので、町外れに埋まったまま、手つかずの良い状態で残っていた訳なのでしょう。



ではモザイクの細部を、最初の玄関ロビーからどうぞ。
ネプチューンの凱旋。

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写真では図柄の端が切れていますが、下部にはイルカが泳ぎ、戦車に乗る
ネプチューンと迎える妻の、この華やかな勇壮さ!
こういったモザイクの線の、体の表現の巧さにいつも驚嘆します。
     
  

そして、その細部。 

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玄関ロビーの奥、図でVANO16とある部分、中央に酒神バッカスと、

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写真左が、顔の部分、

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そして、4隅にある人物と植物柄。

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大きな部屋、約7m四方ある横臥食堂だったろうという部屋。
平面図では上側の4の部屋を、ほぼ全体が見える写真でまずどうぞ。
     
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このモザイクは中心部が多色使いと2色使い、周囲が2色で、
4辺の内一面を覗いて幾何学模様の素晴らしいデザイン。

      

中心の四角の中はご覧の様に、多色モザイクで海の生物。
色使いが大変鮮やかで、装飾的にも優れていますね。

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中心を取り巻き円形、十字の変形とでもいうのか、人物、鳥、植物などが囲まれ、
その周囲は幾何学模様ですが、多色と、白で浮き出る柄の取り交ぜが素晴らしい!

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そして1辺は、勢子と犬と鹿とイノシシの狩りの図という、なんとも豪勢なモザイク柄。

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別の角度からの様子をどうぞ。

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所で今回コムーネのサイトを読んでいて大変興味深い事を知りました。と言うのは、

こういったモザイクを作るには勿論その道の職人がいる訳ですが、
柄を、配置を、色を決めるにはどうするのか、
そういった事を疑問に思われた事がおありでしょうか?

私はモザイクについては考えた事が無かったのですが、ギリシャの赤絵、黒絵の壺、皿
などに描かれている人物像、あれは大変にシャープで無駄な線も無く、
そして下手な絵!というのを見た覚えが無いのですね。
皿絵はともかく、カーブしている壺に描いてもです!

一方古い陶器の絵付けはもう様々で、素晴らしく上手いのもあれば、下手もで、
ははは、それで、きっとギリシャの壺絵は下絵作りのプロがいて、
その型紙を使って描いていたのだろうと、想像していたのです。

で、たまたまギリシャの壺を見た時にガイドさんがおられたので、型紙について質問すると、
多分そうでしょうねぇ、どれもが上手すぎますものねぇ、との事で、やはりそう思われるか、
と納得していたのですが、

今回コムーネのサイトに書いてあったのは、
当時この一帯に、こういった大規模で質の高いモザイクを注文する貴族がおり、
それに対応する腕の良いモザイク職人達が、型紙を持って入りこんでいたであろう、と。
という事で一挙に疑問解決。

そうですよね、注文主にすれば、良いのを作ります、と請け合ってくれても、
どんなのが出来るのか不安でしょうし、もちろん好みもあるでしょうしね。
絵描きでも昔は注文を受けるのに、あれこれ見せる下絵があったり、フレスコ画なら
穴をあけた型紙を持っていて、ピエロ・デッラ・フランチェスカなど、同じ人物の顔を
右向き、左向きと使い分けている例があるそうで、ははは、賢い!

モザイク、彫像、彫りの飾り、調度品、絵・・、何でも商品見本や型紙があって、
仕事を受けていたのでしょう。

金箔を貼ったり金を使う、又はラピスラズリなどの様な高価な画材を使う場合は、
どれ位使うかも決めたそうですから、
写真のない時代の、まだ芸術家という存在が無かった時代の、そういった値段決めの
駆け引き場面を想像すると、可笑しいですね。
       
       

さて本題に戻り、こちらは9番の部屋。 真ん中に髪が蛇になったメドゥーサの顔があり、
周囲を様々な柄が取り囲みます。

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写真右がそのメドゥーサの顔で、なんとも大胆で、素晴らしい表現!
蛇もちゃんと口を開け、舌が、きゃ。

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こちらは周囲装飾の一部。

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我々は大変幸運な事に、ちょうどガイド付きでグループが見学中の所に
いわば紛れ込む形で見れたのですが、見学するには申し込が必要です。
+39.347.9782936 に電話するか、
info@domusdelmito.it にメールを。
      
サンタンジェロ・イン・ヴァードのコムーネのサイトは
http://www.comunesantangeloinvado.it/index.php?id=8957

ドムス・デル・ミートについては、こちらにも。 申し込みが出来ます。
http://www.domusdelmito.com/

発掘の様子なども含めてのYoutube n.1~3は、こちらに。



さて気分を変えまして、は~い、サンタンジェロ・イン・ヴァードの名物、
白タルトゥーフォ。
まずは昨年のお祭りのポスターから。 毎年10月に開催の様ですね。

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こんな写真もサイトにあり!

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ここの白タルトーフォの特徴は、香りも味も刺激臭が少ない柔らかなものなのだそう。
が、はぁ、まだ白いのは食べた事がありませんで。
TVニュースのピエモンテの方の白タルトゥーフォの市、また今回見たこの町の
ヴィデオでも、出品者のいう事は同じ。

つまり大きな、高いものはイタリアでは売れない、イタリア人は買わないと。
どこに行くか? 昨年のアルバのはマカオだったかな、あの辺りのお金持ちがね!
ええ、こういうニュースは日本にお住まいのグルメの方がご存知ですね、ははは。



タリアテッレにかけた白いタルトゥーフォ! ム、ム、ム。

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お祭り最中の夜の広場。

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タルトゥーフォをワン君と探す様子のヴィデオを探しました。
最初のは短く画質も良く、但しここのではなく、ピエモンテのランゲの物で、
以前1kもの大きなのを見つけた事があり、忘れられない!と。
http://www.youtube.com/watch?v=8-1A1VqEdDE

こちらは長く、私もまだ全部見切れていませんが、フェッラーラ市のドキュメンタリーで、
秋の森の様子も美しく、白と茶のワン君がタルトゥーフォを探す様子、黒君は現在
まだ修行中などなど、お時間のある方どうぞ!
http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&v=3xDCnpqOUlg&NR=1



マルケ州の町のご案内の最後に、土地の旨いものの写真をどうぞ!
       
マルケは東がアドリア海に接し、西はアッペニン山脈なので海と山の産物がある州で、
美味しいものがどっさりの筈で、ちょっぴり涎を飲み込んで下さいね。
肉類、チーズ、魚のスープ・・!!!

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てな事で、こうして他の町も横目で睨みながら、ここも良さそうですねぇ、

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ここもサン・タンジェロ・アンジェロの反対側なんだと、クリスさんに教えて
頂きましたが、こうしてアッペニンを越えトスカーナ入りをしたという訳でした。
       
マルケ州は、トスカーナやウンブリアに比べ観光売り出しもまだまだの様子で、
余り有名ではありませんが、その分掘り出し物の町、村がたくさんある気がします。
またのチャンスを狙いましょう!


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