・ ロベルト・インノチェンティ ・ サルメデの絵本挿絵展にて 

先週土曜に出かけた、サルメデで開催の「子供の為の国際絵本挿し絵展。
皆と一緒の美味しく安いアグリトゥリズムでのお昼は既にご覧頂きましたが、
今日ご案内するのは、会場で出会った1人のイラストレーターの作品です。

今年で30回目の開催のサルメデの、子供の為の絵本絵画展ですが、
昨年まだ建設中であった新しい建物もオープンし、以前の市役所内の
会場共に2つで開催、ゆっくりと見て回れる様になっておりました。

記念展という事もあるのでしょう、1人の招待作家の作品がかなりの数
展示されており、それが今日ご案内のロベルト・インノチェンティ・
Roberto Innocenti.
イタリア人、フィレンツェ近郊の生まれで現在も近くに住み、
制作を続けている作家です。

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ご案内、と言っても新人なんぞではなく、単に私が知らなかっただけで、
既に何冊も絵本が出版、日本でも何と7冊!彼の絵を使った絵本が
出ているのも知りましたので、
皆さんの中には私よりも彼について詳しい方がおられるかも!

ですが、まぁ、原画を何十枚ほども見るチャンスがあり、はい、
インクと透明水彩、という同じ材料を使っている事もあり、
 展示会場でしげしげと顔を近づけ、色の付け方や線の太さ、
インクの色なども眺め写真を撮ったので、
その内の何枚かは細部も一緒にご覧頂きますね。

まずトップは「ピノッキオ」。
会場で撮った写真はガラスが反射しているので、ここでご覧頂くのは
サイトで探した物ですが、会場で実際に見た物の内から選びました。



こちらも「ピノッキオ」ですが、実際の画面はもっと暗く、
その暗い中での表現が本当に美しく、まず目を引かれた作品でした。

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そして、この美しい画面!
ブリューゲルの絵を彷彿とさせる冬景色ですが、イタリアの田舎。

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日本で出版されている彼の絵本は、ピノキオの冒険、くるみわり人形、
ラストリゾート、エリカ・奇跡のいのち、クリスマス・キャロル、シンデレラ、
百年の家、で、

私が見たのはこれ以外に、ローザ・ビアンカ、眠れる森の美女、宝島などで、
題名を確かめなかったのもありました。
     

  
こちらは「ラストリゾート」。
お話の筋は知りませんが、時間、天候による海の表情が素晴らしく、

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近くで見ると、波の表現にどこか北斎風を感じたりで、
興味深くもありました。

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これは題名を見ておりませんが、それぞれの家の住人の生活が偲ばれ、
映画「裏窓」を思い出し。

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「宝島」

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「クリスマス・キャロル」

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「ピノッキオ」にしろ、この「クリスマス・キャロル」にしろ、かっての
生活摸様の表現に、彼の渋い色の取り合わせが大変良く調和し、
それと共に一種独特の遠近感、俯瞰図などが、
不思議な魅力をたたえていると思います。



「ピノッキオ」の雪景色にしろ、上の絵の遠くの薄曇りの中の色にしろ、
なんともいえない密度があり、それをしげしげと眺めた事でした。

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「眠れる森の美女」

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かってのこちらの版画作品には、素晴らしく細部まで描きこんだ物があり
驚嘆しますが、これはペン描きでその味を出し、色も薄く、銅版画に手彩色、
の味わい。それにしても最終的なペンの線がとても細く、これが驚異でした。



彼の絵にユーモア精神、と私は思うのですが、絵の中に、どこかで見た
人物風とか、動作が垣間見える事で、あ、あれあれ、というのが幾つかで、
「ローザ・ビアンカ」 この少年のポーズも、有名な写真がありますね。

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ナチによる悲劇を扱った作品のもう1つは、
「エリカ・奇跡のいのち」
茶色から黒への濃淡、そして白とのハーモニーで、

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この絵は展示されてませんでしたが、唯一使われている色、ピンク。
お母さんが、命を援ける為に列車から投げ出した赤ちゃんのおくるみの色。

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そして、お母さんは・・。

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絵本のお話の最後は、成長したエリカが追想する場面で、
ここは明るい彩色場面で。



ロベルト・インノチェンティ・Roberto Innocenti.
フィレンツェ郊外で1940年生まれ、独習で絵を描き始めたそうで、
2008年にアンデルセン賞の絵画部門を受賞されているそう。

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こちらは会場に何点も展示があった、「百年の家」

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今回会場で彼の絵に出会い、その仕事の密度、色の美しさ、繊細さに、
自分の仕事の雑さ、粗さに改めて反省する点が大いにあり、
なんのかんのと文句を言わず、近道を考えず、もっと腰を据えて描け!と、
そう考えた事を忘れない様に、と、これを買って戻りました。




日本語版のタイトルは「百年の家」ですが、原題は英語版で「ザ・ハウス」
イタリア語では「時の(を経た)家」。

アペニン山脈にある見捨てられた家を子供たちが見つけ、
1901年春にこうして修復が始まる場面からお話が始まりますが、
家の戸口に見えるのは1656と刻まれた、長い時を経た家の物語。

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1905年。 新しい家に家財が運び込まれ、新しい息吹の芽生える春。
絵本が大判で、A4のスキャナでは半分しかスキャンできず、これは左半分。
この緑も実物は本当に薄~い緑で、こんな鮮やかではないのが残念。

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1915年。 家は少し建て増しされ、葡萄畑も増え、
左側では結婚式の場面。

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第一次大戦があり出征した夫は戦死。 
厳しい冬も乗り越え、1929年秋の葡萄の大収穫。
家も全部2階建てになり、隣接の納屋も整備され。

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1936年、収穫の秋。 が、戦争の足音はすぐそこまで。
右下に切れましたが、黒シャツ長靴のファシスト隊員の姿。

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そして表紙になっている、夜中の爆撃で非難する人々の姿があり、
1967年の晩秋、お葬式。

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家はも少しがっしりと大きくなり、屋根も新しく瓦ぶきになってますが、
閉じられ、無人に。



1993年。 既に家は放棄され30年近く、再び屋根が落ち・・。

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1999年、高速道路が通る場面があり、
最後の家の姿がありますが、まぁ、ご覧に入れずに、ね。


かって刻まれていた1656年の戸口の年代は、1936年と刻み直され、
これもムッソリーニの時代に各地で起こった事。

サイトをあれこれ見ていた時、この本の朗読会もあるのを見つけて聞き、
日本での本文がどう書かれているのかを知りましたが、
やはりニュアンスが違いました。

イタリア語版のは詩が苦手な私には分かり難いのですが、
時の流れを語っています、ちょっと哲学風、とでも言えるかな。

それに対し、日本語版は優しく、絵が物語る説明までにも及びます。
絵本だから、子供が見ても、という認識からかも知れませんが、
絵解きは、ゆっくり眺め、あ、ここに何がある、ここにこれが、
では、こうかな? で良いのではないかと、ちょっと意地悪BB風に、ははは。

イタリアの田舎の風景が、人々の生活が繰り広げられるインノチェンティの絵。
家の古い壁はまさにイタリアを伝えます。
細部まで描きこまれた絵の中の世界を辿り、ゆっくりと旅をする、
多分彼の絵本は子供向けではなく、大人用ではないでしょうか。
子供達には、お母さんの援けが必要かも。

私にとってこの絵本は、色の発色がやはり会場での実物とは違いますが、
時々広げ、自分が会場で考えた事を思い返すためにも、眺めています。
こういう絵が描きたい、というのではなく、
描く姿勢、絵に取り組む気持ちについて考えた事を忘れないために!


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